エッセイ:装幀

緑で彩られた、おちついた雰囲気。題字は、飛び出てくるような大きな白文字二文字と、黄緑色の五文字。『巨泉 人生の選択』。二十世紀最後の年、社会人四年目の頃、書店で見つけ、衝動買い。

大橋巨泉氏と言えば、「クイズダービー」。1980年代を思い出す。大橋氏が醸し出す、自由で大らかな雰囲気にも憧れ、新宿の紀伊国屋書店でのサイン会に足を運んでいた。緊張しながら、緑のカバーの本を名乗りながら手渡すと、「北野か? あいつの親戚じゃないだろうな。」「いえ、違います。」といったやり取りを思い出す[1]

申し訳ないことに、その本は引っ越した際に紛失。

大橋氏なら昨今の社会状況についてどのような解説をされただろうか。

先日、近所の古本屋の書架を眺めていたら、『大橋巨泉「第二の人生」これが正解!』という文字が目に飛びこんで来た。白色のカバーを見ると、大橋氏の笑顔が粗いドットで描かれていた。文字の色は、白、黒、赤となぜか三色。ページをめくると「ブックデザイン」を担当された方の名前が記されていた。

あの、緑の本を装幀されたのは誰だろう。将来、もし自分が本を出す事があれば、是非あのような装幀をしていただける方にお願いしてみたい、と思う。


[1] 当時の日記によると、2000年5月14日(日曜日)。運良く先着150名以内に入れた。

「まさか、あいつと関係があるんじゃないだろうな」

「違います」

「今あいつフランスに行っているんだよ、カンヌ映画祭に」

「ああ、そうですか」

緊張して、それ以上は言葉が続かず。

その後、サイン会を取材していたテレ朝のインタビューに応じたが、自分のコメントは放映されなかった。

日記の記述:「サイン会には3:1位で男が多かったように思う。年代は意外と若く、30~50代中心か。20代も多かった。また、若い女性もいた。やはり比較的若い世代ほど将来の生活に不安があったり、今の生活に不満を感じたりしているのだろうか?」

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