
前回は読書の四類型の話と、1972年に出た改訂版と1940年の初版の違いに関する説明を詳説した序文の内容を要約した。今回は本文の第1章「読書の諸次元」の小見出し1「読書の営みと技術」と2「読書の類型」を紹介する。
第1章:読書の諸次元
1. 読書の営みと技術
A.能動的読書とは?
*読書は能動的にも受動的にも行う事ができ、より能動的に読書すればするほど、質の高い読書を実現できる。
➞ 読書の際に、自分と書物に対し多くを要求すればするほど自身の読書技術の向上につながる。
*読書の技術の巧拙は、様々な手法による意思の伝達の試みを、いかに上手く受け止められるかによって決まる。
➞ 野球に例えるなら、キャッチング技術の巧拙のようなもの。キャッチングの巧拙は、いろんな球種、たとえば直球、カーブ、チェンジアップ、ナックルボール等をいかにうまく捕球できるか、にかかっている。それと同じようにいろんなタイプの文章をいかに受け止めて理解できるかによって、読書の巧拙は決まる。
*読者が受け取る事のできる内容の量は、読書に投入した活動量と、そのために必要な思考行動をいかに上手く行えるかにかかっている。
B. 読書の目的:情報を得るための読書と理解を深めるための読書
*読書の技術 = 自分の思考だけを頼りに文章の理解を深めていくプロセスの事。
*情報を得るための読書と理解を深めるための読書の違い。
1. 情報を得る為の読書 = 新聞や雑誌等、一読して内容を理解できる文章 が対象。
2.理解を深める為の読書 = 一読しただけでは完全には理解できない文章が対象。
*理解を深める為の読書が成立するには、以下の条件が必要。
1. 本のテーマについて著者の方が読者よりよく理解している。
➝著者と読書の間で理解度の格差が存在する。
2. 読者がその理解度の格差を、自助努力である程度縮める事ができる。
➝格差を完全に埋めるのは難しくても、ある程度縮める事が可能な状態で、理解度が著者と均等になる方向に進む事ができる。
*学習する為には、自分よりも習熟した人間に学ぶ必要がある。
➝誰に学ぶべきか、どのようにして学ぶべきかを知る必要がある。
*本書が扱うテーマは、理解を深める為の読書技術。
C. 学習としての読書:教えられて学ぶ事と、発見を通じて学ぶ事の違い
*知識を得た状態と啓発された状態の違い。
➝啓発された状態とは、事実を知っているたけではなく、なぜそうなのか、その事実が他の事実とどう繋がっているのか、といった内容まで理解している状態の事を指す。
➝啓発された状態に到達するには、著者が主張している内容を知った上で、その主張の意味や意義とその背景、著者がそのような主張を展開する理由、を把握する必要がある。
*教わって学ぶ事と発見を通じて学ぶ事の違い。
➝発見を通じて学ぶ = 他人に教わる事なく、研究、調査、内省を通じて学習する事。
➝教わって学ぶ = 発見に到達できるよう、他人に支援してもらいながら、すなわち教えてもらいながら、学ぶこと。
➝他人に教わる事なく学ぶ時は、自然や現実の世界が直接、学びのプロセスの対象になる。
➝他人に教わるという支援を受けないで発見に到達するための技術とは、自然や現実世界の状況を直接読み取るための技術。
➝教わって学ぶという、他人に支援してもらいながら、発見を得るための技術は、読書の技術や、他人の説明から、学び取る技術。
*読書の技術には、他人の支援なしに学習する為に必要な技術が内包されている。
➝観察の鋭さ、容量の多いワーキングメモリ、想像力の豊かさ、内省と分析の訓練を受けた知性等が必要となる。
*学習を継続するには、一人で本を読む事によって学ぶ力が必要。本からうまく教わる技術の習得が鍵となる。
Part 1-2: 読書の類型
1.基礎的読書
➝文章の意味の把握が主眼。
2.内容を大まかに把握するためのサラッと読み
➝短時間で大まかな内容やテマを把握する事が目的。
3.分析的読書
➝分析的読書は、本の内容を理解する事が主眼。
➝必要な時間をかけて熟読する事で実現する、質の高い読書。
➝本の内容を咀嚼し、消化する為の読書。
➝能動的な読書方法。読者は疑問点や質問を考えながら読み進める必要がある。
➝分析的読書は、娯楽としての読書や情報を得る為の読書をする際には必要にならない場合が多い。
4.比較的読書
➝複数の本を読み、それぞれの関係性と共通のテーマを見つけ出す技術。
➝その上で、それらの本が扱っていないテーマについて分析を行う技術。
➝最も努力が必要で、最も達成感が得られる読書方法。
第1章「読書の諸次元」の小見出し1「読書の営みと技術」と2「読書の類型」を読んで生じた疑問点
- 情報を得る事と、理解を深める事の違いが曖昧な気がする。情報を得る為に新聞や雑誌等を読んでいても、一読しただけでは分からない考え方や、意味が分からない専門用語が出てくる事もあるが、そのような内容を理解しようとする事は、本書の言う「理解を深める」とはまた違う話なのか。
- 「理解を深める」とは具体的にどのような本を読んだ時に得られる状態なのか、がややピンとこない。イメージとしては難解な哲学書の読書に挑戦すると得られる体験のように思えるが、そういう話なのだろうか。著者が説明する論理や物の仕組みが腑に落ちた感じで理解できた時が理解の深まった状態だろうか。
- 普段あまり読まないような、理解するためにじっくり読む必要がある本に挑戦してみたい、と思うようになった。
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