前回は読書の技術と類型に関する内容を紹介した。その内容を三点にまとめると、理解を深めるための読書をする時は質問を考えながら能動的に読書する必要がある、というのが第一点。そうする事により、読者は著者が主張している内容の意義、およびその主張を展開する理由を理解する事ができる、というのが第二点。そのようにして分析的読書を成功させ「啓発された状態」に到達できれば、自分で直接、自然や現実世界の状況を観察する事で発見を得る技術、つまり他人の支援なしで学ぶ技術を習得する事ができる、というのが結論のような第三点だと感じた。
話が飛躍するが、先日、理系の博士号を取得した後にキャリアを積み、現在も研究者として活躍されている方の話を聞く機会があった。その方の話によると、研究者は研究する分野についての現在までに積み上げられてきた知見の全容を把握する必要があり、そのためにまず勉強する。その後、これまでに研究、解明されていないテーマを見つけた上でそのテーマについて新しい発見をし、それを論文に書いて認められて初めて博士号を取得できる、とのことだった。それを聞いていた聴衆の一人が「激ムズじゃん。」と言うと、その研究者の方も笑いながら「激ムズです。」と語っていた。
他人の支援を受けずに一人で学ぶ技術とは究極的にはそういう事なのか、と本書を読みながら思った。
さて、今回紹介するのは「基礎的読書」と「内容の概略を素早く把握するための読書」について詳述した箇所だ。「基礎的読書」は言葉のどおり、子供の頃に学ぶ基礎的な技術の話なので割愛し、概略を把握するための読書の箇所についての要点を以下にまとめる。
内容の概略を素早く把握するために行う読書は大きく分けて2種類。
1.概略を掴むための飛ばし読み ➝ 本の構造を把握する事が目的。
2.難しい内容の本の通読 ➝ 次に分析的読書を行うための準備が目的。
1.概略をつかむための飛ばし読みの具体的な方法
■前書きを読み、本のテーマを把握し、どの分類に当てはまる本なのかを見分ける。
■目次に目を通し、本の構造を把握する。
■索引に目を通し、主要な用語や論点、参照されている本や著者を把握する。
■重要な用語が使われている本文の箇所に目を通す。
■出版社の紹介文を読む。
■主要な論点を取り上げた章を読む。
■飛ばし読みをする。飛ばし読みをする時は、同じ箇所を連続して読むのは数段落から数ページ程度にとどめる。最後の2,3ページや後書きには必ず目を通す。
2.難しい内容の本の通読。
■難しい本を始めて読む時は、一度通して読む事を優先する。分からない単語を調べたり、分からない内容について立ち止まって検討したりしないようにする。
■初回の通読は、2回目以降の読書の理解を深めるため、と割り切る。
今回は以上。次回は能動的な読書の具体的な方法について。
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