
前回は本書の第5章から6章の内容を紹介した。能動的読書を行う上で読者が意識すべき四つの質問と、本の内容を自分のものとして理解し、咀嚼できるようにするための手法として、本書で指摘されていたポイントを取り上げた。
復習になるが、能動的読書をする際に把握すべき点は、次の通り。
- その本が全体として扱っているテーマは何か。
- 詳細に述べられている内容は何か。それはどのように述べられているのか。
- その本の内容は全体として、もしくは部分的に、正しいと言えるか。
- その本の内容、情報、主張の意義は何か。
話はそれるが、Lakitというオンライン講座サービスの、『本がもっと自分のものになる、未来につながる読書ノート』というレッスンを最近、受講してみた。
グラフィックレコーダーの講師による合計47分の短めの講座だが、読書した内容を自分の中に定着させるためのノートの取り方をテーマとしていて、非常に興味深かった。グラフィックレコーダー、という概念は初めて知った。議論がスムーズに進むように、人が話した内容やミーティングの中身を参加者全員が見えるホワイトボード等にメモしたりする役割らしい。ビジュアル的に洗練された、パッと見てすぐ内容が分かるようなメモをいかにして書くか、アーティスティックな能力が問われる仕事だ。文章を羅列しただけのノートになりがちな自分としては、少しでも見栄えが良く、後で見返した時に本の内容がすぐに思い出せるようなノートをとるためのコツを学びたくて受講してみた。
特に印象に残ったのは次の3点だった。
- 本を読む自分の目的を意識しながらメモをとる。
- 著者が強調している点を中心にメモをとるのではなく、あくまで自分に必要な、今の自分が興味を覚える内容をメモにする。
- メモはなるべく少なくする。
その他にもビジュアル的にきれいにまとめるためのアイディアやアドバイスが盛りだくさんで、読書ノートの取り方として参考になった。いざ受講してみると、集中して47分のレクチャーを受講しようとするのは結構気合が必要だったので、ほどよい長さだと思う。
本書、How to Read a Book が勧める読書法は、著者が何を主張したがっているのか、どのような問題解決を試みているのか等、あくまで著者のねらいを理解する事を主眼においているが、このLakitのオンライン講座では自分が必要とする内容を中心にメモを取る事を勧めていて、それはそれで有益な考え方のように思えた。本書の後半部分ではそのよう読書方法も紹介していて、そこに通じる考え方のように感じた。
さて、その講座で学んだビジュアル表現の方法もすこしずつ取り入れていきながら、本書、How to Read a Book のポイントを紹介していきたい。
今回取り上げるのは、第7章『本の骨格を把握するための方法』と第8章『著者が使う単語とその用法を理解するための方法』の二つの章。
分析的読書を行う上で重要なアドバイスが記載されており、本書の一番核心的な内容のように思えた。今後、分析的な読書を行っていく上で一番意識すべきポイントのような気がする。

第7章:本の骨格を把握するための方法
分析的読書を行うための第一段階
- 本の種類を見極める。(小説、ノンフィクション、事象を説明している本等。)
- 本全体の内容を把握し、一つの文、もしくは短い段落以内の長さで述べる。
- 本の主要な部分を見つけ、全体の構成や順序を把握し、アウトラインを作る。
- 著者が解決しようとしている問題、答えを見つけようとしている疑問を示す。
分析的読書の第一段階で把握すべき内容 = 本全体のテーマは何か?
第8章:著者が使う単語とその用法を理解するための方法
分析的読書を行うための第2段階
- 重要な単語を見つけ、著者がそれをどのように定義し、どのような意味で使っているかを理解する。(Come to terms with the author.)
*重要な単語の見つけ方
① 自分が理解しにくいと感じる単語を探し出す。
- 著者が強調している単語を見つける。
- 自分の知識を頼りに、重要な単語の目星を付ける。
- 著者が他の作家と異なる見解を示している単語に注目する。
2.重要な単語の意味を把握する。
*自分が理解しにくいと感じる単語を見つけ、常に同じ意味で使われているのか、場所によって異なる意味で使われているのか、の検討をつける。
- 複数の意味を持つ単語の場合、それぞれの意味がどのような関係にあるのかを把握する。
- その単語が異なる意味で使われている箇所を書き記しておき、なぜ異なる意味で使われているのか、そのヒントを探す。
*自分が意味を理解できている単語を正しいコンテクストで使いながら、意味が理解しにくい単語の意味を紐解くためのヒントとして使っていく。
著者が使用している単語と、それが持つ意味は区別して把握する。
Vocabulary vs. Terminology.
語彙(単語の種類)と用法(状況によって変化する、単語が持つ意味)
- 一つの単語が複数の意味で使われているケース。
- 複数の単語やフレーズに一つの意味を持たせ、同義語として扱っているケース。
*重要な単語を見つけ、それが持つ意味を全て明らかにし、著者と同じ用法でその単語を使用することに納得できた時に、その本に対する理解度は飛躍的に高まるだろう。本書、112ページ。
なかなか内容の濃い、ヘビーな二つの章だった。ここにある作業を行うだけでも、だいぶ理想的な分析的読書に近づけそうな気がするので、今後取り組んでいきたい。
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