【気になる書評】Garth Risk Halberg, “This Novel Has Fewer Periods Than This Headline. It’s 400 Pages Long.,” review of HERSCHT 07769, by Laszlo Krasznahorkai, translated by Ottilie Mulzet, New York Times, Sept. 12, 2024.

 今回から新たに週一回ぐらいのペースで、自分が興味を惹かれた書評を取り上げていきたいと思う。こちらも英文媒体の書評は日本語で紹介し、和文媒体のものは英語で紹介する形をとっていきたい。

 こうすれば、新聞や雑誌等に掲載されている書評を読む習慣がつき、書評をもっとうまく書くためのヒントが得られるのではないか、そして文章を書く上での瞬発力がつくことにつながるかもしれない、と考えた。

 いずれは、気になった書評記事を2~3本まとめて取り上げていきたいが、今回はニューヨーク・タイムズに最近掲載された書評を一本紹介したい。

 400ページもある小説にピリオドが一つしか使われていないという。むちゃくちゃ読みにくそうだ。ピリオドの代わりにカンマを一杯使っているのだろうか。

 出だしが面白かったので、書評を読み進めてみると、ハンガリー人作家、クラスナホルカイ・ラースローの小説、「Herscht 07769」の舞台はドイツのテューリンゲン[1](Thuringia) という旧東ドイツ領だった地域であるらしい。主人公はフローリアン・ハーシュト(Florian Herscht)という若者で、普段は地元のネオナチ集団のリーダーの元で働き、一緒に建物の落書きを消す作業をしている、とのこと。暇なときはカナという町を歩きまわり、いろんな住民と世間話をするのが好きなのだそうだ。

 そんな彼がある時、街に住む物理学者の話に不安を覚え、世界が破滅するのではないか、と心配し始める。幸い、小説の舞台の2010年代のドイツを率いているのは、物理学者でもあるアンゲラ・メルケル首相。フローリアンにとって、安定感と信頼を象徴するような人物で、彼女ならこの世界の危機を救ってくれるだろう、と彼は期待する。彼は首相あてに長い手紙を書き、その度に自分の名前と郵便番号を合わせた 「Herscht 07769」という署名で締めくくるようになったそうだ。

 街の周辺で様々な不穏な出来事が起きるようになり、主人公の「無責任な絶望」は、表面化していない真実とつながっているのでは、と読者に想起させる内容になっている、と評者である米国人作家、ガース・リスク・ホールバーグは指摘する。  

 ピリオドを一つしか使わない事にもメッセージ性が込められていて、その試みは成功している、とのことだ。自分も体験してみたいな、と思ったし、ホールバーグの著作である“City on Fire”にも興味を覚えた。


[1]テューリンゲン州で9月1日に実施された州議会選挙で、極右政党が第一党になったニュースは記憶に新しい。「ドイツ極右AfDが躍進、東部2州の議会選挙 テューリンゲン州では第1党に」BBC News Japan, 2024年9月2日付け。https://www.bbc.com/japanese/articles/cly9p3xv2eyo

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