ダラス・カウボーイズにとって厳しい試合になる事を覚悟しつつ、恐る恐るNFLゲームパスを開くと試合はまだファーストクォーターで、スコアは3対7でデトロイト・ライオンズのリード[1]。試合開始早々もうすでにビハインド[2]なのか、と憂鬱な気分だったが、幸いダラスの攻撃中で、デトロイト側のエンドゾーン近く、レッドゾーン内まで迫っていた。
「ここでタッチダウンを決めて10対7と逆転してくれるだろう」と期待したこの瞬間が、残念ながら、自分にとってはこのゲームのピークとなってしまった。
QBのダック・プレスコットがドロップバックする。先週見た、似た状況が脳裏をよぎる。ピッツバーグ・スティーラーズとの試合では、エースWRのシーディー・ラム選手がエンドゾーン奥にむけて駆け抜ける一方、ダックはエンドゾーン手前に向けてパスを投げ、結果は明らかなミスコミュニケーションからくるインターセプション。
「2週連続、相手エンドゾーン内でインターセプトされる事だけは絶対避けねばならない。そんなことは当たり前すぎて言わずもがな」と思いながら画面を凝視すると、ダックがバスを投げた方向、攻撃側から見てエンドゾーンの左隅は、ずいぶんアウェー・チームの白いユニフォーム[3]が目立ち、密集している気がした。「いや、これはいくらなんでもマズイだろう。でもきっと何か勝算があるに違いない」と祈るような気持ちで画面を見つめ続けるとカメラアングルが突然切り変わる。バランスを崩し[4]、倒れ込むようにしてボールに向けて手を伸ばすラム選手と、待っていましたとばかりに数歩華麗にバックステップしてパスをインターセプトするライオンズ選手の背中が視線に飛び込んできて、唖然とさせられた。
「ここでディフェンスが粘りを見せてくれるだろう」と思ってもいない事を内心、反芻してみたものの、3対10、3対17、3対20,3対27、と容赦なく点差は開くばかり。その後、カウボーイズは何とかフィールドゴールを一つ決めて6対27でハーフタイムに突入した。
第3週目、ボルチモア・レイヴンズとの試合で見せた驚異的な追い上げがまた期待できるかも、という思いは心の片隅には残っていたが、観戦する気は失せてしまっていた。
数時間後にファイナルスコアを確認すると、デトロイト・ライオンズ47、ダラス・カウボーイズ9。カウボーイズは後半も3対20で負けていて、38点差でライオンズが圧勝する結果に。この無様な敗戦をどう解釈すべきか。
楽観的過ぎる見方かもしれないが、クリーブランド・ブラウンズ、ニューオーリンズ・セインツ、ボルチモア・レイヴンズ、ニューヨーク・ジャイアンツ、ピッツバーグ・スティーラーズ、そしてデトロイト・ライオンズの6チームを相手に3勝3敗という成績自体は、決して悪くはないように思う。(セインツ相手に負けたのが痛かったが、セインツは想像していたより強かった。)
ルーキー二人が先発メンバーに名を連ねるオフェンシブラインがシーズン序盤は苦戦するかもしれない、ランニングゲームには大きな期待はできない、シーディー・ラムの契約更改に時間がかかりチームへの合流が遅れたためダック・プレスコットとの阿吽の呼吸が復活するには時間がかかるかもしれない、といったマイナス要因はある程度事前に想像できた事。なので、シーズン前半は我慢の時期で後半に飛躍するパターンかもしれないと覚悟していたし、引き続きそのように期待している。
ただ、ディフェンスが40失点以上する試合がシーズン序盤だけで2試合もあったのは期待外れだったのと、オフェンシブラインが想像以上に苦戦していて、この二点は心配だ。
特にディフェンスのボラティリティはどう捉えるべきなのだろうか。今の選手層ではディフェンス・コーディネーターのマイク・ジマーのスキームがうまく機能しないのか。彼の厳しい指導スタイルが選手に合わないのか。新しいスキームにチームが慣れるまで時間がかかっているだけで、シーズン後半にはディフェンスも調子が上向きになり、安定する事を期待したい。
オフェンスの方は、強いオフェンシブラインが早く復活してほしいのと、ラム選手に相手ディフェンスの厳しいマークが集中し過ぎないように、頼りになるワイドレシーバーがチーム内からもう一人台頭するか[5]、外から一人獲得できるといいように思う。以前ダラスでプレイしていたアマリ・クーパー選手の獲得に動いてくれないかな、と思っていたら、バッファロー・ビルズに先をこされてしまい、残念。
バイウィークを挟んで次の試合はサンフランシスコ49ers。今のディフェンスの調子だと軽く40失点~50失点してしまいそうな対戦相手で、かなりの劣勢になりそうだが、ダラス・カウボーイズの奮起[6]に期待したい。
[1] 現地時間10月13日にダラスの本拠地で行われた試合。試合前のダラスの成績は3勝2敗で、相手のデトロイトは4勝1敗。
[2] ダラスは一応、フィールドゴールで先制し3対0と試合開始して3分39秒の時点でリードを奪ったものの、試合開始6分弱の時点でタッチダウンを許し3対7とデトロイトにリードを渡すと、この試合もう2度とリードを握ることはなかった。
[3] ダラス・カウボーイズは伝統的にホームの試合であえて白いアウェーのユニフォームを選択する事が多く、白を着ている時の方が勝敗成績は良いはずだが、この日はなぜか濃紺のユニフォームを着用していた。こういうジンクスにも拘って欲しいところだ。
[4] ビデオ映像を見直すと、そこまでバランスを崩したりはしていなかったようだが、自分の記憶にはそういうイメージが焼き付いている。
[5] ジェイレン・トルバート選手がその役割を果たしつつあるので、彼の一層の奮起と活躍には期待が持てそう。
[6] 1990年代に3度チームをスーパーボウル優勝に導いたクオーターバックのトロイ・エイクマンはデトロイトとの試合後、地元ラジオ番組とのインタビューで、ダラスのWR陣のパス・パターンの走り方には怠け癖がついている、と痛烈に批判した。そのためクオーターバックはWRが走っている位置にタイミングよくパスを投げ込むことが難しくなっている、という趣旨の話をしてプレスコット選手を擁護した上で、ラム選手はパス・パターンの走り方を改善する必要がある、と述べた。“Troy Aikman Blasted Cowboys’ ‘Lazy’ Wide Receivers Amid Team’s Disappointing Start,” By Kristen Wong, Sports Illustrated, Oct.17, 2024.
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