
さすがに今週は気持ち良く、10点ぐらいリードしてくれないかな、と根拠のない期待をしつつNFLゲームパスをつけると、ダラス・カウボーイズの背番号23、ランニングバックのリコ・ダウドルがダイビングしながらナイスキャッチを決めている場面だった。「お、これはファーストダウン獲得か?」とテンションが上がるが、スコアを見ると10対21でアトランタ・ファルコンズのリード。しかも次のプレイはサードアンドテン。遠くから実況の「ファーストダウンでタイラー・ガイトンがホールディングの反則さえ犯していなければ」という声が聞こえて来る。だがまだ勢いはある、このまま畳み掛けてくれ、と思い画面を見つめていると、クォーターバックのダック・プレスコットがボールを受けた次の瞬間、アトランタの選手がダラスのオフェンシブラインを突破。プレスコットはサックを避けるためやむを得ずボールを投げ捨てた。あっけなくダラスの攻撃が終わり、失意の中、ゲームパスを一旦切った。(というのが自分の記憶だったのだが、ダラスカウボーイズのサイトで得点履歴を確認すると、一応ここでフィールドゴールを決めて、点差は13対21に縮み一応ワンスコアゲームにはなっていた。その喜びも長続きはしなかったが。)
この瞬間が、自分にとってこの試合のハイライトだった、と言いたいところだが、見せ場はもう少し後にあった。
20分ぐらい経ち、再度ゲームパスをつけるとアトランタがリードを広げていてスコアは10対27。ダラスファンの心が折れるような点差に広がっていた。試合はいつの間にかフォースクォーター終盤まで進んでおり、残り時間は5分20秒程度。その上、クォーターバックの背番号が4番から10番、バックアップQBのクーパー・ラッシュの番号に替わっているではないか。しかもエースワイドレシーバーのシーディー・ラムはなぜかサイドラインの外で佇んでいる。
状況を飲み込めないまま、試合時間が容赦なく過ぎて行く。だがしかし。そこはさすがベテランで百戦錬磨のクーパー・ラッシュ。(2年前、プレスコット選手が負傷で6試合欠場する中、精度の高い確実なプレイでチームをまさかの5連勝へと導き、窮地を救ってくれた事は記憶に新しい。) ラッシュが正確なパスを小気味良くポンポン投げ、急に攻撃のテンポが改善する。レシーバーのジェイレン・トルバートがディフェンスと一対一になったのを見逃さず、エンドゾーンへと美しい放物線を描くロングパスが投げ込まれる。トルバートはボールにしっかり視線を集中させながらダイビングするも、ボールをキャッチし切れない。後半歩でも前に出れていれば取れそうな惜しいプレイだった。結局その数プレイ後、トルバートへのパスでなんとかタッチダウンを決める。スコアは19対27となったが、試合残り時間は僅か1分20秒程度で、オンサイドキックをリカバーしてタッチダウンしないと追いつけないという、ほぼ絶望的な状況だった。
ここでダラスのヘッドコーチのマイク・マッカーシーはなぜか2ポイントコンバージョンをねらう。自分には非常にリスキーで無謀な判断に思えた。というのも、この局面では可能性は低いものの、とにかくオンサイドキックをリカバーしてタッチダウンを決めるというシナリオに賭けるしかない。ここで2点入れても1点入れてもその状況には変わらない。ただ、ここで失敗し追加点が入らないと点差は19対27のまま。仮にオンサイドキックを奇跡的にリカバーできたとして、そこからタッチダウンした上に、今度は2ポイントコンバージョンを決めないと追いつけなくなってしまう。元々可能性の低いシナリオの難度をさらに上げてしまう事になる。なのでここは確実にキックで一点を返して20対27とすべきだ、と強く思った。
ではなぜマイク・マッカーシーはそんな一見無謀なギャンブルに出たのだろうか?憶測に過ぎないが、オーバータイムで勝つ自信がなかったからではないだろうか。27対27で同点に奇跡的に追いつけたとして、オーバータイムであっさり負けては何の意味もない。どうせ奇跡を狙うならオーバータイムに行かずに勝てる方法を選びたい、という発想だったのかな、と類推するが、自分としては同点に追いつく可能性が少しでも高い方法を選ぶべきだったと思う。そうしないと、せっかくオンサイドキックをリカバーしても、まだこれからタッチダウンと2ポイントコンバージョン決めないといけないのか、と選手は凹むのではないかと思うし、リカバーしようとする気も失せてしまうのではないだろうか。
結局、シーディー・ラムへのパスが通り2ポイントコンバージョンは成功し、アトランタがオンサイドキックを難なくリカバーしたので結果には影響しなかったが、やや疑問の残る判断だった。

ファイナルスコアは21対27。ダラスは3連敗で成績は3勝5敗となり、この後の対戦相手の強さを考えるとプレイオフどころか勝率5割以上を確保するのが難しくなってきた、と思わざるを得ない。しかもである。先発QBダック・プレスコットは脚の腿を負傷し、エースワイドレシーバーのシーディー・ラムは右肩を負傷。2人が次の試合に出場できるのか不透明な状況だ。仮にプレスコット選手が出場できないなら、来週はクーパー・ラッシュを中心にチームが団結し、ファイトとプロとしての意地を見せて欲しい。
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