
凄まじい試合だった。
ダラス・カウボーイズの宿敵、フィラデルフィア・イーグルスがここまで強いとは。
ダラスがスーパーボウル出場から遠ざかって以来、というかNFCチャンピオンシップにすらたどり着けず、もがき続けているここ三十年間(来年のスーパーボウルが、ちょうどダラスが最後にスーパーボウルに出場してから三十年というありがたくないアニバーサリーになる。自分がカウボーイズを応援し始めた1980年から、その翌年にジョー・モンタナとドワイト・クラークの「ザ・キャッチ」にやられるなどして三シーズン連続でNFCチャンピオンシップに敗退し、1992年シーズン後のスーパーボウル出場&優勝を果たすまで、今考えるとわずか十二年!それに比べると、カウボーイズは今やその三倍ぐらいの年月の間<しかも四半世紀以上!>勝利の美酒から遠ざかってしまっている。)
文の途中で興奮しすぎて、何を書こうとしていたのか忘れてしまった。
何はともあれ、サード・クオーター残り二分四十秒の時点で0-34!
(もう遠い昔のように思える昨年の十一月十日、ダラスはサード・クオーター残り二分五十六秒の時点[1]でフィラデルフィアに 6-28 と大きく水を開けられていたのが可愛く思えてしまう。実はダラス強くね、と勘違いしたくなるようなスーパーボウルの点差だった。と思ったら十二月二十九日には 7-41 [2]でさらに大敗していた。この試合もNFLゲームパスで見たはずだが、記憶から消え去っている。カウボーイズは、ぐうの音もでないくらい、イーグルスに圧倒された2024年だった。)
話は戻るが、今回三十年ぶりぐらいにスーパーボウルを最初から最後までしっかり観戦した。1980年代後半、NHKの衛星放送が始まる前は、日本のTVで放映されるNFLの試合はスーパーボウルぐらいしかなかったので、毎回食い入るようにTV観戦していたが、1990年代以降は、ダラスが出場した時しかまじめに観る気がおこらなかったし、結果でさえあまりフォローしていなかった。
今年はアメフトに詳しい知り合いの方と一緒に観戦できることになり、仕事は休みをとり、ピザや枝豆を注文しながらカラオケボックスでじっくり観戦した。
観戦者二名の共通見解は、MVPはイーグルスのディフェンス全体か、せめてディフェンスライン、というところに落ち着いた。チーフスのスター選手、クオーターバックのパトリック・マホームズを見ていて、途中から気の毒に思えてしまった。サックされていないプレイでもヒットされる事が多かったと思うし、ほぼ常にディフェンスの強烈なプレッシャーにさらされている感じがした。
前半の最初の方はそれでもスクランブルで時間を稼いだりはできていたものの、全然ボールを投げられない。「イーグルスのセカンダリーにカバーされているのでしょうね」という感じで、ボールを手放したくても投げられるところがない、という情勢だった。
一方、イーグルスのQBジェイレン・ハーツ選手は空いているレシーバーにしっかりパスを通し、決めるべきところは決めてくる感じ。
イーグルスが7対0とリードしたところ[3]で、チーフスのディフェンスがハーツのパスをインターセプト。チーフスの自陣ゴールライン近くからの攻撃となり、チーフス・オフェンスにとって厳しい状況ではあったが、さあここから挽回だ、というムードになりかけたところで、あっさりスリーアンドアウト。サードダウンの、タイトエンド、トラビス・ケルシー選手へのパスは少し短く、通らなかった。このプレイを決められず、パントしてあっさり攻撃権をイーグルスに返してしまったのが、試合の流れを決めてしまったような気がした。
(NFLについての長文フィーチャー記事を掲載するサイト ”Go Long”のTyler Dunne記者[4]は記事の中で、イーグルスがチーフスをフィジカルなプレイで圧倒していた、という趣旨の評価をしている。その意味で言うと、あまり一つのプレイや一つの局面によって大勢が左右される類の試合ではなかったのかもしれない。)
イーグルスはフィールドゴールを決めて、セカンド・クオーターの途中で 0 対 10。チーフスのディフェンスも粘りを見せていたので、この時点では、苦しいながらも、そこまで焦る状況だとは見受けられなかった。
だが、しかし。
その後、まさかのピックシックス。0 対 17となり、これはイーグルスが 50点以上とってしまうのではないか、と1992年シーズン後のスーパーボウルでダラスがバッファロー・ビルズ相手に52点取った時の事が頭をよぎる。
チーフスの挽回に期待して、結局セカンドハーフも観戦する事にしたものの、さらに 0 対 34 まで点差は開き、その後チーフスはなんとか得点し 22 対 40 で終わったが、イーグルスが圧倒的な強さを見せた試合だった。
全てはディフェンスラインとオフェンスラインの強さ(後はセカンダリーのカバー能力)次第、と思わせる内容で、ダラスの2025年シーズンは大丈夫か、と早くも不安にさせてくれる怒涛の試合でもあった。
ということで、ブライアン・ショッテンハイマ―が新ヘッドコーチに就任したダラス・カウボーイズ。自分としては前ヘッドコーチのマイク・マッカーシーと契約を延長してほしかったのでやや残念だったが、まあここで新しいスタートを切るのも、それはそれで、悪くはないのかもしれない。
ディフェンスコーディネーターはシカゴ・ベアーズの前ヘッドコーチでダラスでのコーチ経験もあるマット・エバーフラスとのことで、コーチ陣は堅実な布陣に見える。オフェンス側ではランオフェンスの専門家っぽいコーチも何人かいるようで、ランオフェンスの強化につながるなら歓迎すべきこと。
個人的な不安はオフェンスラインとディフェンスライン、ワイドレシーバー等で、オフェンスラインは今年ルーキーとしてシーズンを戦い抜いた選手達のさらなる活躍に期待したい。ディフェンスラインはマジー・スミス選手の奮起やドラフト等で強化されるなら素晴らしいし、ワイドレシーバーはジェイレン・トルバート選手やジョナサン・ミンゴー選手の飛躍とドラフトを通じた強化が果たせるならワンダフル。ラニングバックについては、リコ・ダウドル選手のプレイを引き続き見てみたい。あとはクオーターバックのダック・プレスコット選手の怪我からの復活と大活躍に望みを託したい。
エースレシーバーのシーディー・ラム選手や、エースパスラッシャーのマイカ・パーソンズ選手は言わずもがな。
カウボーイズにとって、波乱含みで苦戦した一年だったが、今年は意外なことにサンフランシスコ・49ersに勝る成績を残せた。ダラスは 7 勝 10 敗、サンフランシスコは 6 勝 11 敗。どんぐりの背比べで、だから何だ、の世界ではあるが、2025年シーズンも49ers以上の成績を残しつつ、NFC東地区の首位を奪還し、NFCチャンピオンシップに進出して勝ち、スーパーボウル出場&優勝を三十年ぶりに達成する事を期待したい。
[1] ESPNのサイトを参照した。
https://www.espn.com/nfl/boxscore/_/gameId/401671676
[2] ESPNのサイトで試合の記録を確認して、驚いた。そういえばシーズン終盤にもこんな試合があったか。https://www.espn.com/nfl/game/_/gameId/401671765/cowboys-eagles
[3] 試合を振り返るためにESPNのサイトを参照した。https://www.espn.com/nfl/playbyplay/_/gameId/401671889
[4] Go Longのサイト: https://www.golongtd.com/
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