【NFL観戦記】2025年 第2週 ダラス・カウボーイズ対ニューヨーク・ジャイアンツ

  凄まじい試合だった。

 ニューヨーク・ジャイアンツは去年より強くなったとはいえ、ダラス・カウボーイズがここ何年もカモにしてきた相手で、直接対決ではダラスがもっか13連勝中である。見ていてストレスの少ない、気持ちのいい試合になるだろう、と期待しながら、先週の月曜日、祝日の9月15日にNFLゲームパスのアプリを開いた。

 試合はジャイアンツへのキックオフで始まり、そのオープニング・ドライブでジャイアンツはカウボーイズのエンドゾーン近くまで簡単にボールを進め、いきなりフィールドゴールを決めてしまう。その一方でカウボーイズの攻撃は淡白で、最初のドライブはスリーアンドアウトで終わる。

 開幕戦の試合と違い、前半ダラスのラン攻撃はファーストダウンにあまりうまく機能せず、毎回セカンドアンドセブン以上を残す形となってしまう。これはここ数年カウボーイズのオフェンスが行き詰まりやすい負けパターンで、ファーストダウンのランがノーゲインか1,2ヤード獲得に留まる、もしくは最悪の場合数ヤード失い、いきなりセカンドアンド12とかになる。

 ダラスはここ数年、マイク・マッカーシー政権の時代から、このセカンド&ロングが本当にあきれるほど苦手というか、傍から見ていてフラストレーションがたまって仕方がない。そのような状況に出くわすと、急に蛇ににらまれたカエルのようになるのか、弱気で成功の見込みが薄そうなプレイコールが増え、サード&ロング、そしてパントという憂き目を見るケースが多いように思う。

 前政権から内部昇格した現ヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマー氏にもそのきらいがあるのだろうか。ジャイアンツとの試合の前半には相手ディフェンスに読まれていそうな、タイトエンドへのショートパスをセカンドダウンに試みたものの、あえなく失敗に終わり、最終的にスリーアンドアウトという冴えない展開が続き、完勝期待は吹き飛ぶ。それどころか、二連敗スタートの不安が頭をよぎる。

 セカンドクォーターにはジャイアンツのエンドゾーン近くまで攻め込んだところで、ペナルティーフラッグが乱れ飛び、一つのプレイでジャイアンツに対しパス・インターフェアランスを含む3つの反則が宣告されたものの、カウボーイズはワイドレシーバーのシーディー・ラム選手がアンスポーツマンライク・コンダクトの反則をとられて、両チームの反則は相殺され、プレイのやり直しという結果になってしまう。ラム選手が相手選手の方を両手で指差して煽るようなジェスチャーをしなければ、ファースト&ゴールになっていた局面で、見ていて腹が立つシーンであった。

 幸いそのドライブはケイボンテ・ターピン選手へのタッチダウンパスで終わり、ほっと胸をなでおろしたが、ここでフィールドゴールに終わっていれば、と思うとゾッとするシーンだった。

 このようにフラストレーションがたまる流れのまま、前半は10対13とジャイアンツのリードで終わる。

 試合は午前2時開始で、朝起きた時点でもう勝敗も決まっていたため、我慢できず、少しずつ先のシーンを見てみる事にした。すると、途中ダラスが27対23でリードを握ったかと思えば、ジャイアンツが再度27対30で逆転したり、そこからまたダラスが34対30で逆転したりと目まぐるしくリードが変わる展開となっているではないか。そこからまたジャイアンツがリードを握ったものの、ダラスが試合終了間際に64ヤード(!)のフィールドゴールを決めてオーバータイム入りしていた!

 そこで勢いに乗ったままカウボーイズが勝利したのか、と期待しながらさらに先に進むと、ダラスのクォーターバックのダック・プレスコット選手が映しだされたりしていて、これは勝ったか、と安堵したのも束の間、もう少し先に進めると、オーバータイム残り3分程度で今度はジャイアンツのクォーターバック、ラッセル・ウィルソン選手がアップで映っているではないか。しかも、もう録画ビデオを先送りにしようにも、先がほとんど残っていない!万事休すか。あれだけ必死に追いついたのに負けたのか、と落胆しながら録画をもう少し先送りにすると、またプレスコット選手が映っているではないか!

 ということで最後はカウボーイズのスーパー長距離キッカー、ブランドン・オーブリー選手が淡々と46ヤードのフィールドゴールを決めて、ずっと見ていると疲れる試合に、ついに終止符を打ってくれた。

 さて、この試合で良かった点と言えば、シーディー・ラム選手が見事に復調したことをまず挙げておきたい。落球は一回あったかもしれないが、決めて欲しい場面では着実にパスキャッチを決めて、9回のパスキャッチで110ヤード獲得し、二週連続で100ヤード以上のパスキャッチを達成した。ジョージ・ピケンズ選手はまたもやパス・インターフェアランスの反則を誘うことに成功した上に、パスキャッチでタッチダウンも決めるなど、こちらも縦横無尽の活躍を見せてくれた。(それにしてもピケンズ選手のパスキャッチは芸術品のように整っていて、見ていて美しい。ラム選手、そしてジャイアンツのマリク・ネイバー選手などもそうだが。)

 カウボーイズのエース・ランニングバックのジャボンテ・ウィリアムズ選手はオフェンシブラインが切り拓く道が開くまで辛抱強く待ってから、一気にスルスルとそこを駆け抜けていくことに長けていて、見ていて安心感がある。ランニングバックが上手いというのはこういうプレイのことを指すのか、と唸らされるようなプレイぶりである。マイルズ・サンダース選手も要所でいいランを決めていた。

 タイトエンドのジェイク・ファーガソン選手にもパスが集まっていたし、ワイドレシーバーのジェイレン・トルバート選手もパスキャッチに成功していた。なにより、クォーターバックのダック・プレスコット選手は開幕戦と同様に、大胆で強気なプレイでチームを引っ張っている感じがした。レシーバー陣に対し、「俺についてこい!」的な、狭いスペースへの難しいパスを投げ込んでいて、このプレイスタイルがチーム全体に浸透していけば今年のダラス・オフェンスの破壊力には期待できそうだ。オフェンシブラインはまだ不安定なところはあるものの、ラン攻撃がうまくいき、パス攻撃も結構通っていることからすると、なかなかいい活躍を見せていると思う。

 さて、ディフェンスは肝心な場面でジャイアンツのラン攻撃を、ファイト溢れるプレイで防ぎ、去年とは一味違うぞ、と思わせてくれる場面もあった。オーバータイムには相手QBにプレッシャーをかけてインターセプションを奪いとり、勝利に直結するプレイも見せてくれた。

 だが、しかし、である。相手QBにパスで450ヤード以上許してしまうのは、2020年あたりの「ざるディフェンス」復活を彷彿とさせ、大いに不安である。カロライナ・パンサーズで長年タイトエンドとしてプレイした実績を持つ、TV解説者のグレッグ・オルセン氏によると、ダラスのディフェンシブ・コォーディネーター、マット・イバーフラス氏のパス・ディフェンスはゾーン・ディフェンス中心とのことだが、試合中の録画映像を見ていても、ダラスのコーナーバックが、相手レシーバーをカバーしているもののぴったり張り付かず、長いパス成功を許す場面がこの試合だけで何度もあった。(ぴったりつこうと思えばつけそうな選手が、「このディフェンス・スキームで自分の守備責任を果たすにはこんな感じでついておけばOKだよね」的な風情で、セイフティ等のヘルプを期待しているのか何となくついていき、その隙をジャイアンツQBのウィルソン選手に何度も付かれていたような感じがした。)

 さて、ダラス・カウボーイズの第3週目の対戦相手はシカゴ・ベアーズである。日本時間の9月22日(月曜日)午前5:25にキックオフ予定のこの試合はベアーズの本拠地ソルジャー・フィールドで行われる。ここでしっかり勝ち星を重ねておきたいところだが、カウボーイズの先発コーナーバック、トレボン・ディッグスが膝の負傷のため、この試合に出場できるか微妙、との事である。カウボーイズは今週も点の取り合いで勝利するしかないのだろうか。ディフェンスの奮起に期待したい。

Tags:

コメントを残す