
ダラス・カウボーイズの公式ウェブサイトに掲載された記事では記者4人ともカウボーイズの勝利を予想していた。公式サイトなのでバイアスがかかりやすいとはいえ、妥当な見方のように思えた。
なにしろ対戦相手のシカゴ・ベアーズは開幕から2連敗中で、ホームでデトロイト・ライオンズ相手に21対52で完敗したばかり。また、昨シーズンまでライオンズのオフェンシブ・コォーディネーターとしてNFL有数のオフェンスを指導し、今シーズンからベアーズ監督に就任したベン・ジョンソンの記者会見での表情は暗かった[1]。それもそのはず、2024年のドラフト全体一位で指名されたクォーターバック、ケイレブ・ウィリアムズ選手は時折、目を見張らせるような鋭いパスを繰り出すものの、オフェンス全体としてはまだ安定感を欠いているような印象だった。
そして何より、第4週にカウボーイズはホームでグリーンベイ・パッカーズを迎えようとしていた。シーズン開始直前にダラスからグリーンベイにトレードされたパス・ラッシュのマエストロ、マイカ・パーソンズ選手との因縁の対決を控えていただけに、ベアーズ相手に勝ち星を稼いでおきたいところであった。
そんな中、不安を煽り、嫌な予感を呼び起こすような情報をいくつか目にした。
不安にさせる情報①:カウボーイズ公式サイトの記事の中で、クォーターバックのダック・プレスコット選手がベアーズの新ディフェンシブ・コーディネーター、デニス・アレンのディフェンスを苦手にしている、とする情報を見かけた。そのことについて問われたプレスコット選手は、アレン氏はまだシカゴのコーディネーターに就任して一年目で、ニューオーリンズ・セインツ時代ほど「多様な」守り方はできないのではないか、という趣旨の発言をしていた。それを目にした時「そこまで苦手にしているのか」と不安になった。(カウボーイズは昨シーズンの2週目にセインツ相手に19対44で完敗し、開幕戦でスーパーボウル出場候補の一つと目されたクリーブランド・ブラウンズに33対17で完勝した後の気持ちのいい余韻に浸っていたカウボーイズファンを、失意のどん底に陥れた。)
不安にさせる情報②:ザ・アスレチック誌の9月18日時点の記事によると、賭けの世界のポイント・スプレッドはベアーズのマイナス1で、ベアーズが1点差で優勢との見方に傾いている、とのことだった。記者もカウボーイズの敗戦を予想していた。
不安にさせる情報③:カウボーイズの先発コーナーバックの一人、トレボン・ディッグス選手が膝を負傷し試合への出場が危ぶまれている、との記事を目にした。(ディッグス選手は出場は果たしたものの,必ずしも本調子ではないようだ。)
ということで試合当日の朝を迎えた頃には、結果に対する自信はかなり揺らいでいた。おそるおそるNFLゲームパスを開いたところ、案の定、ファースト・クォーター途中でスコアはなぜか既に3対14で、カウボーイズは劣勢を強いられていた。
しかし、そこから6対14と点差を縮め、さらにタッチダウンを決めて12対14!次の瞬間にはジェイレン・トルバート選手へのツーポイント・コンバージョンが決まり14対14の同点に追いつく。観戦中、思わずガッツポーズをしてしまう。
その瞬間が結局、この試合のハイライトとなってしまった。そこから先は試合終了まですべて下り坂の展開だった。
さあ、ここからは気持ちを切り替えて、あさっての日本時間9月29日(月曜日)午前9:20にキックオフし、カウボーイズにとって前半の天王山と言える宿敵グリーンベイ・パッカーズとの試合へと目を向けたい。
なんと、ベアーズ戦序盤で負傷したエース・ワイドレシーバーのシーディー・ラム選手だけでなく、ライトガードのタイラー・ブッカー選手までもが足首の負傷で数週間欠場する見込みのようだ。カウボーイズ公式サイトの報道振りを見る限り、ラム選手の方が若干早く復帰できそうな状況で、ブッカー選手の方は最低4試合欠場となるインジャード・リザーブ・故障者リスト入りの可能性が高い、との事である[2]。ラム選手についても、今週に入り、負傷した足に保護用のブーツをはきながらチームの施設内をスクーターで移動していた、というカウボーイズ番記者による目撃情報がX上に挙がっていて[3]、流石にパッカーズ戦の出場は難しそうだ。
これまでのところ、今シーズンのカウボーイズのランオフェンスとランディフェンスは改善されていて、エース・ランニングバックのジャボンテ・ウィリアムズ選手のランには鬼気迫るものがある。頼もしい限りである。
問題は、なぜそうなる?とカウボーイズファンならずとも観ている者全員がつっこみたくなるようなパス・ディフェンスの惨状で、選手、コーチ陣、そしてディフェンシブ・コーディネーターのマット・イバーフラス氏には猛省を促し、パッカーズ戦では是非、一味違った守り方を見せてもらいたい。
なお、「ざるディフェンス」などと自分が批判するのはあつかましすぎるので、今後はその批判は封印しようと思う。
ただ、お願いなのでカウボーイズ史上最悪の年間473失点を記録した2020年(当時はまだ年間16試合だったので、1試合当たり約29.6失点)や、2010年代前半の2年連続400失点以上の、暗い時代の再来は何としても回避して欲しい。なお、カウボーイズは昨年468失点(2021年以降は年間17試合なので、1試合当たり約27.5失点)を喫していて、よくそれで7勝できたものだと思う。
今年は3試合で既に92失点(週ごとの内訳は24失点、37失点、31失点)と一試合当たり約30.7失点のハイペースで、このままいってしまうと年間521.9失点と大台を更新してしまい、まるで今年値上がりしているコーヒー豆の価格のごとく失点が膨らんでしまう。
さすがに年間を通じてそんな結果になるとは思えないし、ディフェンスさえ我をとりもどしてくれれば普通に強いチームだと思うので、第4週のホームでの試合では、こだわりは捨てて、開き直って、心機一転、気合の入ったディフェンスを見せてくれることをぜひとも期待したい。
[1] Ben Johnson postgame media availability, 2025 Week 2 | Chicago Bears, YouTube, Sept. 16, 2025.
[2] “Tyler Booker likely headed to IR with ankle injury,” By Patrik Walker, DallasCowboys.com, Sept. 22, 2025. ただし、9月26日時点ではまだ両選手ともIR登録はされておらず、その判断は週明けになる予定、とのこと。
“Updates: No decision yet on Lamb, Booker to IR,” DallasCowboys.com, Sept, 26, 2025.
[3] Clarence Hill JrのX上の投稿など。
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