
どう考えてもパッカーズ優勢と思いながらも、カウボーイズ勝利への期待も捨てきれず、おそるおそるゲームパスを開いてみたところ、試合は第3クォーター終盤、スコアは16対20でグリーンベイがわずかにリード。意外と食らいついているではないか!
キックオフでボールがちょうどダラスに戻った場面で、レシーバーのジェイレン・トルバート選手やケボンテ・ターピン選手へのパス、そしてジャボンテ・ウィリアムズ選手のランにより、カウボーイズはパッカーズ陣内40ヤード付近まで攻め込んでいた。
ワイドレシーバー(WR)のエース、シーディー・ラム選手の欠場により出場機会を得たWRのライアン・フロノーイ選手[1]へのパスが通り、カウボーイズはファーストダウンを獲得する。フロノーイ選手は続けてランプレイでヤードを稼ぎ[2]、いい感じの活躍ぶりである。レシーバーなのにランプレイを任されるのは、まるでラム選手、もしくはNFL最速の男かもしれない、ターピン選手並みの扱いだ。フロノーイ選手に対する首脳陣の期待と信頼の現れだろうか。ランニングバックのジャボンテ・ウィリアムズ選手のランは相変わらず力強く、頼もしい。最後はタイトエンドのジェイク・ファーガソン選手へのパスが通り、タッチダウン。ポイントアフターも決まり、カウボーイズは23対20と逆転に成功した。
激しい点の取り合いとなったこの試合、注目の一つはカウボーイズからパッカーズにトレードされたリーグ有数のエッジディフェンダー、マイカ・パーソンズ選手を相手にダラスのオフェンシブ・ラインがどの程度持ちこたえられるのか、という点にあったが、蓋を開けてみると、パーソンズ選手が目立つことは、フォース・クォーターが終わるころまで[3]ほとんどなかった。パーソンズ選手はパスラッシュでカウボーイズのオフェンシブ・ラインのブロックを素早くかいくぐり、ラインの選手を翻弄していたものの、クォーターバックのダック・プレスコット選手がボールを手放すタイミングが早かったため、パーソンズ選手はサックを決められずにいた。
この試合ではプレスコット選手からトルバート選手へのサイドライン際のロングパスが注目を集めた。X上ではプレスコット選手のパスを褒める声が多い気がしたが、エンドゾーンまで走り込んでいたトルバート選手がQBの状況とパスコースを見て、一気に10ヤード付近まで戻り、サイドラインの外に出たパスを横っ飛び気味にキャッチしつつ両足をインバウンズに残したのは見事だった。ものすごく難しい反応だったのではないだろうか。
以前、プレスコット選がコール・ビーズリー選手に通した、ジャイアンツ戦での第4クォーター残り1分という場面での起死回生のエンドゾーン奥へのタッチダウンパスや、サードダウン残り30ヤード(!)の場面でプレスコット選手がT.Y.ヒルトン選手へ投じたロングパス、サードダウン残り20ヤードでトニー・ロモ選手が投じたパスをテレンス・ウィリアムズ選手がサイドライン際で両足をインバウンズに残しながらキャッチしたスーパープレイなどを彷彿とさせる、ナイスパス&ナイスキャッチだと感じた。

そして何より忘れてはならないのが、ジョージ・ピケンズ選手が大ブレイクした試合だった、という点である。相手ディフェンスの並び方を見て、サイドラインからジャージ姿で見守るラム選手が、ピケンズ選手有利を確信し、その予想通りにディープパスが決まる場面は、見ていて心が温まる思いがした。
ディフェンスにとっては課題が多く残った試合だったが、フリーエージェントとして契約したエッジディフェンダーのジャデビオン・クラウニー選手がカウボーイズの一員としてデビューし、2023年ドラフト1巡目指名選手で今シーズンの活躍に期待がかかるマーズィ・スミス選手が2試合連続で出場を果たし、エッジディフェンダーのジェームズ・ヒューストン選手がサックを決めるなど、今後につながりそうな活躍も見られた。パーソンズ選手のトレードでカウボーイズが獲得したディフェンシブ・タックルのケニー・クラーク選手も頼もしい活躍ぶりで、今後のカウボーイズ・ディフェンスの進化につながりそうな気がする。
試合はフォース・クォーター終了間際にカウボーイズがフィールドゴールを決めて37対37の同点に追いついた後、オーバータイムではパッカーズが追いつく展開で[4]試合は40対40の同点という、なんとも煮え切らない微妙な結果に終わった。
試合直後の印象は、カウボーイズにとっては負けに等しい同点で、初戦のイーグルズ戦同様、もったいない試合を落とした、という暗い評価だった。ただ、楽観的な見方をすれば、強敵相手に一歩も引かないどころか終盤はむしろ優勢な試合運びを展開し、潜在能力の片鱗を見せつけた戦いぶり、と言えるのではないだろうか。
次の試合はアウェイでニューヨーク・ジェッツとの対戦である。ジェッツはクォーターバックのジャスティン・フィールズ選手がイーグルズのジェイレン・ハーツ選手に似た、走れるQBのためカウボーイズ・ディフェンスは苦労しそうだ。ランニングバックはブリース・ホール選手、ワイドレシーバーはギャレット・ウィルソン選手とジェッツのオフェンスはタレント揃いである。
ディフェンスにも、以前オールプロに選出された二人の若手スター、コーナーバックのソース・ガードナー選手およびディフェンシブ・タックルのクイネン・ウィリアムズ選手がいる。
ジェッツのヘッドコーチは今シーズンから就任したアーロン・グレン氏である。昨シーズンまでライオンズのディフェンシブ・コーディネーターを務め、新ヘッドコーチとしての手腕が注目される中チームは開幕から4連敗している。ジェッツの選手達は目の色を変えて本拠地で今シーズン初勝利をとりにくるだろうか、カウボーイズはそれを凌駕するだけのファイトを見せられるだろうか。カウボーイズも1勝2敗1分けで決して楽観できる成績ではない。激しい競り合いになりそうだ[5]。
[1] 2024年ドラフト6巡目にカウボーイズが指名した選手で、昨シーズンや今年のトレーニングキャンプでの活躍によりX上ではかねてから注目を集めていた。今後の加着に期待がかかる。
[2] RBはジャボンテ・ウィリアムズ選手一人、タイトエンドはルーク・スクーンメイカー選手が右側に一人のフォーメーションで、レシーバーは右側にジェイレン・トルバート選手、その外にフロノーイ選手が、タイトエンドと同じようにライン・オブ・スクリメージの2ヤードほど後ろに並び、ウィークサイトの左側にレシーバーがもう一人並んでいた。ボールがスナップされると、RBはQBからトスを受けるような形で右横に走り、TEは左側めがけてLOSの後ろを走り、フロノーイ選手は左側に向けてRBの手前を走り、QBからトスを受ける。TEはそのままリードブロッカーとなり、フロノーイ選手はその横を駆け抜け、12ヤードほど獲得した。
[3] 活躍していなかったわけではないが、サックはフォース・クォーターが終わった時点ではなかったし、カウボーイズのクォーターバック、ダック・プレスコット選手が自由自在にパスを通すなど、カウボーイズのオフェンスは絶好調だった。
[4] カウボーイズはタッチダウンを決めそうな勢いだったが、パーソンズ選手がパッカーズ絶体絶命の場面で値千金のサックを決め、ダラスはフィールドゴールを余儀なくされた。肝心の場面でビッグ・プレイを決めるパーソンズ選手は流石である。
[5] この観戦記の初稿はパッカーズ戦直後に書いたため、翌週のジェッツ戦に向けた印象はその時点でのもの。
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