【NFL観戦記】 2025年 第6週 ダラス・カウボーイズ対カロライナ・パンサーズ

 今シーズンは特に、ダラス・カウボーイズの試合を途中から見るときは気が重い。ぼろ負けしているのではないか、という悪い予感ばかりが頭をよぎる。

 10月13日の朝も4時に目が覚め、一瞬迷ったが、ライブで試合を見る誘惑には勝てず、NFLゲームパスを開いた。

 第4クォーターで残り時間は13分程度。スコアは24対20でカウボーイズのリードだったが、カロライナ・パンサーズのポゼッションでカウボーイズ陣内に攻め込んでいた。

 この点差を見た瞬間、気持ちは沈んだ。先週、気分がスカッとする勝ち方でカウボーイズはニューヨーク・ジェッツに快勝し、2勝2敗1分けと勝率を5割に戻したばかりである。その勢いのまま10点差以上でパンサーズにも完勝してくれるに違いない―心の中でそう都合よく思い込んでいた事に、その瞬間気づいた。

 カウボーイズ・ディフェンスの今の状態では、同点や3点差のリードはほぼビハインドに等しく感じる。相手チームがポゼッションを握っていればなおさらである。

 案の定、パンサーズのクォーターバック、ブライス・ヤング選手がワイドレシーバーのテタロイア・マクミラン選手にタッチダウンパスを通し、ポイントアフターも決まり、パンサーズは24対27と逆転に成功する。(マクミラン選手はカウボーイズが今年のドラフト1巡目での指名を狙っていたとされる選手で、今シーズン序盤の活躍ぶりを見る限り、何だかとってもいい選手になりそうな気配である。残念ながらパンサーズが先にマクミラン選手を指名し、カウボーイズファンの間では失望が広がったが、その後カウボーイズはジョージ・ピケンズ選手を運良くトレードで獲得できたため救われた形である。パンサーズのハイライトを見ていると、マクミラン選手も素晴らしい選手だなあ、と思わず感嘆する事も多い。背が高いにも関わらず、動きがスピーディーで敏捷性がありそうで、プレイスタイルは少しピケンズ選手に似ているのではないだろうか。名前の響きも格好いい気がする。)

 パンサーズに逆転されたカウボーイズは、まずジャボンテ・ウィリアムズ選手のランで4ヤードを獲得する。先週のニューヨーク・ジェッツ戦でランのたびに5,6ヤード獲得していたような切れ味と比べると、あれ、今週はやや物足りないけど、まあ4ヤード[1]だから大丈夫か、と自分に言い聞かせる。

 その次のプレイはパスが失敗に終わり、あっという間にサードダウンで残り5ヤードとなり、雲行きが怪しくなる。そこはしかし、流石ダック・プレスコット選手とジョージ・ピケンズ選手のコンビである。サードダウンで、フィールド中央のピケンズ選手へのパスが通る。ピケンズ選手はスムーズに方向転換し、左側に駆け抜けていき、パンサーズ陣内のレッドゾーン近辺までボールを進める。

 残念ながら、そこでカウボーイズの攻撃は滞ってしまう。フィールドゴールで27対27の同点に追いつくのがやっと、というもったいないドライブになってしまった。

 その直後のパンサーズの攻撃をカウボーイズ・ディフェンスが奇跡的に阻止し、残り8分強でカウボーイズにボールが戻り、リードを握る絶好のチャンスを得る。

 この後の、カウボーイズによるこの試合最後の攻撃は、振り返るのもつらい無残な結果に終わる。ファーストダウンでプレスコット選手は右手にロールアウトし、左側にスクリーンパスを投げるが、それを受けたウィリアムズ選手の目の前にいたパンサーズの選手にあっさりタックルされ、いきなりセカンドダウン残り15ヤードのピンチ。次のプレイでプレスコット選手はディフェンシブラインからプレッシャーを受け、苦し紛れに、ラインオブスクリメージ左後方にいたウィリアムズ選手へ再度パスを投げるが、タイトエンドのブロックをあっさりかわしたパンサーズの選手にすぐタックルされ、7ヤードを失う。

 プレイのたびに後退したカウボーイズはサードダウン残り22ヤード(!)の窮地におちいる。こんなことならファーストダウンからいきなりブランダン・オーブリー選手にフィールドゴールを狙わせれば良かったのでは、などという理不尽な文句を言いたくなってしまう。

 サードダウンのプレイは何が狙いだったのかよくわからないが、ラインオブスクリメージ右後方の、フルバックのハンター・リブキー選手にこれまたスクリーン気味のパスが何とか通ったものの、取った位置からしてとうてい22ヤード獲得することは望めず、カウボーイズはパントを強いられる。

 まだ試合時間は6分強残っていたものの、カウボーイズ・ディフェンスに攻撃を跳ね返すだけの力は残っておらず、パンサーズはポゼッションを6分間悠々とキープしたあげく、試合終了間際にフィールドゴールを決め、27対30でサヨナラ勝ちを果たした。

 カウボーイズはエース・ランニングバックのウィリアムズ選手が13回のランでわずか29ヤードの獲得に終わり、ほぼ完全に封じ込められてしまった。パンサーズはリコ・ダウドル選手が試合前に予言した[2]とおり、古巣相手に大暴れした。ダウドル選手はラン30回で183ヤードを獲得し、パスキャッチ4回で56ヤードを稼ぎタッチダウンも1回決める大車輪の活躍ぶり。昨シーズン後に、カウボーイズから満足のいく契約オファーを貰えなかったことへの鬱憤を晴らす、歴史的な大活躍[3]となった。

 今シーズンのカウボーイズ・オフェンスはプレスコット選手とピケンズ選手、そしてシーディー・ラム選手を中心とした華麗なパス攻撃と、ランニングバックのウィリアムズ選手の特長である、タックルしようとする相手を跳ね飛ばすような力強いラン攻撃、その両輪がうまく機能し、躍動してきたが、この試合ではラン攻撃を封じられ苦しい展開となってしまった。

 カウボーイズ・ディフェンスは、新コーディネーターのマット・イバーフラス氏のスキームに慣れるのに時間がかかっているのか、マイカ・パーソンズ選手に加え、オフシーズンにディフェンシブ・エンドのデマーカス・ローレンス選手とコーナーバックのジョーダン・ルイス選手が他チームと契約を結び移籍したことが響いているのか、パスもランも縦横無尽かつ自由奔放に許してしまう場面が多く、ちょっと目を覆いたくなるような状態である。

 そういった中、次戦はNFL東地区内永遠のライバル、ワシントン・コマンダーズとの対戦である。ワシントンの期待のホープ、2024年のNFLオフェンス新人王のジェイデン・ダニエルズ選手と、同じく昨年NFLオールプロに選出されたワイドレシーバーのテリー・マクローリン選手を中心とした破壊力抜群のオフェンス相手にカウボーイズ・ディフェンスは復調の兆しを見せてくれるのだろうか。

 幸い、エースレシーバーのシーディー・ラム選手や、先発ライトガードのタイラー・ブッカー選手が復帰できそうな情勢である。ただ、コーナーバックのトレボン・ディッグス選手は自宅での事故により[4]脳震盪の症状が出たため、欠場するらしい。一方、ワシントンはマクローリン選手と元49ersのディーボ・サミュエル選手が共に負傷欠場する可能性[5]があるようだ。

 ラン攻撃をうまく立て直して、コマンダーズ相手に、カウボーイズ・オフェンスは凄まじい点の取り合いを展開してくれるのだろうか。

 ワシントンとダラスの試合は昔から波乱含みで、予想外の結果になることも多い。そのような歴史的経緯から勇気をもらいながら、カウボーイズが勝利、もしくは今後に期待がもてるような戦いをみせてくることに期待しつつ、日本時間明日の10月20日午前5:25分キックオフのホームでの試合を、楽しみに待ちたい。


[1] 後になって見返してみたら、5ヤード獲得していて、この試合の中ではかなりいい方の、カウボーイズによるラン攻撃だった。

[2] ダウドル選手は試合前、カウボーイズ・ディフェンスに対し “buckle up”「ヘルメットのストラップを締めてかかってこい」という趣旨の発言をしていた。そのことについて聞かれたカウボーイズのダック・プレスコット選手は、「飛行機に乗るからシートベルトは締めるしかない」とダジャレのようなジョークで返していて、直接反論することは避けていた。それを聞いた瞬間、プレスコット選手もダウドル選手が大暴れする事を予想しているのではないか、と心配になった。

ダウドル選手の発言(ビデオ開始後3分35秒辺り):”Rico Dowdle praises team effort in Panthers win,” Carolina Panthers, YouTube, Oct. 6, 2025.

プレスコット選手の発言:Calvin Watkins on X, Oct. 10, 2025: “Asked about Dowdle saying the Cowboys’ D needs to buckle up Prescott said: ‘We have to. We’re getting on the plane.’” (記者カルビン・ワットキンズ氏のX上の投稿より。)

[3] ダウドル選手がこの試合で獲得した、ランとパス合わせた合計239ヤードは、1つの試合でのスクリメージからの獲得ヤード数(オフェンスの選手としての獲得ヤード数)としては1995年シーズンからプレイを開始したカロライナ・パンサーズ史上最高の記録、とのことである。“Rico Dowdle has a record-setting day in an emotional game,” By Kassidy Hill, panthers.com, Oct. 12, 2025.

[4] “Trevon Diggs ruled out unexpectedly vs. Commanders,” By Patrik Walker, Dallas.Cowboys.com, Oct. 17, 2025.

[5] “Game status | Terry McLaurin ruled out vs. Cowboys,” By Zach Selby, Commanders.com, Oct. 17, 2025.

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