【NFL観戦記】2025年 第7週 ダラス・カウボーイズ対ワシントン・コマンダーズ

 ワシントン・コマンダーズ相手に久しぶりのピックシックスを記録したダロン・ブランド選手。今後のさらなる活躍が期待される。

 10月20日の午前5時半過ぎにNFLゲームパスを開くと、ダラス・カウボーイズはワシントン・コマンダーズのエンドゾーン近くまで攻め込んでいて、いきなりファースト&ゴールの場面だった。そこで今シーズン大ブレイク中のエースランニングバック、ジャボンテ・ウィリアムズ選手がランでタッチダウンを決めてエクストラ・ポイントも成功し、試合最初の攻撃でダラスが7対0でリードを握る。これ以上ない、幸先のいい、素晴らしいスタートではないか!

 朝食の後、再度ゲームパスを開くと、17対8でダラスが若干リードを広げていた。ダラスの得点はタッチダウン2つと、あと1回はフィールドゴールにとどまったのか、とやや残念に思う。ワシントンの8得点は不思議な気がした。タッチダウン1つと2ポイントコンバージョン[1]だろうか。

 カウボーイズのディフェンスが粘り、ボールがダラスに戻ったものの、攻撃は阻止され、コマンダーズの攻撃も得点なしに終わる。その後カウボーイズのフィールドゴールが決まり、スコアは20対8になったが、カウボーイズ・ファンとしては全く安心できない。

 もっとリードを広げてくれ、とジリジリしながら画面を凝視する。プレイコールが不調なのか、プレイ自体がうまくいっていないのだろうか。エースレシーバーのシーディー・ラム選手が4試合ぶりに復帰し、ジョージ・ピケンズ選手との久しぶりのツープラトン攻撃が見られるはずなのにこの攻撃の停滞ぶり[2]は何なのだ、と憤りを感じた。こんなにもどかしい思いをするなら、ライブ観戦はやめて、いっそのこと試合終了後の観戦に切り替えたほうがいいのだろうか、と自問自答する。

 次にゲームパスを開いた時は、ボールを持ったコマンダーズの選手がタックルしにくるカウボーイズの選手をかわし、払いのけながら、カウボーイズのエンドゾーンのコーナーパイロン向けに走っている場面がスローモーションで流れていた。ダラスの1ヤードラインぐらいでアウトオブバウンズになり、次のプレイでコマンダーズのクオーターバック、ジェイレン・ダニエルズ選手がスナップをお手玉したものの、なんとかボールを確保してそのままエンドゾーンに駆け込んでタッチダウン。エクストラ・ポイントも決まり、ハーフタイムまで残りわずか45秒となったところでカウボーイズのリードは20対15となり、あっという間に5点差に縮まった。

 しかも点を取られたタイミングが悪すぎる。カウボーイズは第2クォーターと第4クォーターの残り2分以内の場面をしっかり勝たないとダメだろう、と思わず悪態をついてしまう。(後ほど、この試合のTV放送を担当していたFOXのグラフィックが流れ、今シーズンのカウボーイズは第2クォーター残り2分以下の時間帯の得点数は30得点で、実はリーグトップの成績とのことで、この懸念も自分の思い込みに過ぎなかった。ディフェンスの失点も含めた得失点差で計算するとだいぶ違った印象になるのかもしれないが。)

 シーディー・ラム選手やジョージ・ピケンズ選手の活躍ぶりを記録したリプレイも流れてこないし、なぜかカウボーイズはラム選手とピケンズ選手の二人を外して唯一のレシーバーがジェイレン・トルバート選手というようなフォーメーションを試みたものの、そのプレイはコマンダーズに阻止されるし、どうなっているのか、と疑問が沸き上がる。ラム選手とピケンズ選手は二人同時に出場させるか、せめて一人は常にフィールドにいるようにした方がいいのではないのだろうか。(実際は前半のカウボーイズの攻撃中のプレイ41回のうち、ラム選手とピケンズ選手が2人ともフィールドにいなかった回数は2回だけ[3]だった。その2回は共にランプレイで、レシーバーはトルバート選手1人だけのフォーメーションだったが、1回は自陣エンドゾーン際でコマンダーズに止められてセイフティを許し、もう1回もヤードを失う結果に終わった。)

 シーディー・ラム選手は約一月振りの試合で74ヤードのタッチダウン・キャッチを決め、全くブランクを感じさせなかった。ジョージ・ピケンズ選手とのエースレシーバーコンビは強力である。

 次にゲームパスを開くと試合はハーフタイムの休憩中でスコアは27対15となっていた。カウボーイズはハーフタイムまで残り40秒位の場面からタッチダウンしたのか!一体どうやって得点したのだろうか。

 少し巻き戻してみると、カウボーイズの攻撃でボールは21ヤードラインにあり、セカンドダウン残り17ヤードで前半終了まで28秒[4]で、とても得点が期待できそうな状況には見えなかった。しかしここが今年のカウボーイズの一味ちがうところ。クオーターバックのダック・プレスコット選手はピケンズ選手にめがけて深いパスを左サイドライン際に投げ込むと、ピケンズ選手は相手コーナーバックの執拗なハンドチェックをものともせず、サイドライン外に落下してきたボールを両手で見事にキャッチし、あっという間に44ヤードを獲得した。

 コマンダーズの35ヤードラインまで前進し、ファーストダウンを更新したところでハーフタイムまで残り23秒である。さあ、これからどう攻め込むのか。後2回位パスプレイをしてうまくいかなければフィールドゴールを狙う形になるのだろうか。

 そこでヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマーが選択したのはウィリアムズ選手によるラン攻撃だった。ウィリアムズ選手はオフェンシブ・ラインの左側に開いた隙間、センターとレフトガードの間を駆け抜け、パワフルな走りでぐいぐい前進し、最後は10ヤードほど相手選手を一人ひきずりながらコマンダーズの1ヤードラインまで一気に進んだ。観ていてあっけにとられるような、電光石火の攻撃だった。

 エンドゾーンは目と鼻の先だが、ハーフタイムまでわずか15秒しかない。もう一度ウィリアムズ選手のランかな、と思って観ていると今度はパスのプレイコールで、プレスコット選手は空いているレシーバーを左側の方から探すものの見つからず、もう本人がそのまま走るしかないか、と思ったその瞬間、真ん中で空いていたタイトエンドのジェイク・ファーガソン選手に全速力の剛速球を投げ込み、ファーガソン選手がこれをナイスキャッチして、いつの間にかタッチダウンが決まった。エクストラ・ポイントも入り、ハーフタイムまで10秒を残し、27-15とワンダフルな形でリードを広げる。

 キックオフでコマンダーズにボールは戻ったものの、コマンダーズはそこでニールダウンを選択し、前半はそこで終わった。

 まだ後半30分がまるごと残っているので、12点差とは言え決して安心できる状況ではなかったが、このハーフタイム間際のタッチダウンは見事だった。コマンダーズ側にかなりの心理的ダメージを与えたのではないだろうか。

 試合後半にはコーナーバックのダロン・ブランド選手による久しぶりのピックシックスも決まり、終わってみれば44対22とカウボーイズの大勝であった。

 ウィリアムズ選手は19回のランで116ヤード獲得し、タッチダウンを1回決め、プレスコット選手はパスを30回投げ21回成功させ264ヤード獲得し、タッチダウンパスを3回通した。

 シーディー・ラム選手は5回のパスキャッチで110ヤード獲得し、タッチダウン1回と、復帰戦でしっかり結果を残した。ピケンズ選手も4回のパスキャッチで82ヤードを獲得しただけでなく、相手のパスインターフェアランスを1回誘い、そのプレイでチームは37ヤード前進した。タイトエンドのジェイク・ファーガソン選手は7回のパスキャッチで 29ヤード獲得し、 タッチダウンで2回得点した。

 そして何より、この試合ではディフェンスの活躍が光った。ブランド選手がパスをインターセプトしそのままタッチダウンを決めた場面以外にも、期待の新人でディフェンシブエンドのドナバン・エゼイラク選手による今シーズン初サック、同じくルーキーのラインバッカ―、シェマー・ジェイムズ選手による、サックと相手のファンブルを誘う一連のプレイなど、試合の流れをカウボーイズに引き寄せるようなビッグプレイが随所に見られた。

 ということで次の試合はアウェイでデンバー・ブロンコスとの対戦である。カウボーイズはブロンコズを相手に1998年以降7連敗中で、最後に勝ったのは30年前の1995年とのことである[5]。直近の2021年の対戦ではプレスコット選手のパスを簡単には通させてもらえず、カウボーイズはブロンコズに完敗を喫した。今年は元ニューオーリンズ・セインツ監督のショーン・ペイトン氏のゲームプラン、そして若手クオーターバックのボー・ニックス選手の活躍により5勝2敗と躍進中のブロンコズは強敵である。この試合に勝ち2連勝できればカウボーイズにも弾みがつき、今シーズンの展望もだいぶ明るくなってくると思うが、どうだろうか。

 先週のようなファイト溢れるディフェンスの活躍と、破壊力のあるランとパス攻撃が実現することを期待しつつ、日本時間10月27日(月曜日)午前 5:25キックオフの試合を楽しみに待ちたい。


[1] 後で確認すると、セイフティで2点取られていた。

[2] 実際はしっかりリードしていたし、自分が見逃していた場面でラム選手もピケンズ選手も大暴れして活躍していたので、杞憂に過ぎなかった。

[3] 公式なデータ等ではなく、自分の観察と計算による数字なので多少のずれはあるかもしれない。

[4] このドライブはカウボーイズ陣内28ヤードから開始したものの、カウボーイズはファーストダウンでサックを許し、すぐにタイムアウトを取った。その直後のセカンドダウンの場面だった。

[5] 出典はPro Football Reference: All Matchups, Denver Broncos vs. Dallas Cowboys | Pro-Football-Reference.com

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