
ひどい試合だった。ダラス・カウボーイズはディフェンスもオフェンスもほとんどいいところはなし。ヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマ―のゲーム・マネージメントも、いつからこんなに消極的になってしまったのか、と失望を禁じ得なかった。本気で追いつこう、勝ちに行こう、という気概は感じられず、むしろ10対56といった惨敗[1]を回避することを最優先した采配のように感じられ、がっかりした。
NFLゲームパスを開いてスコアを確認したのは10月27日(月曜日)の午前6:15頃で、第2クォーター残り約9分といった状況だった。カウボーイズがデンバー・ブロンコス陣内奥深く、エンドゾーンからわずか3ヤードぐらいのところまで攻め込んでいた。そこから元ブロンコスのラニングバック(RB)で今年大活躍中のジャボンテ・ウィリアムズ選手がタッチダウンで得点し、3対14[2]と二けたの得点差から、10対14と一気に4点差にまで追い上げたところを運よく観ることができた。
そのタッチダウンとエクストラ・ポイントをカウボーイズが成功させた場面が自分にとってのこの日のハイライトで、この後はもう、急こう配の坂を転げ落ちていくような感じで、徐々に奈落の底に向かって突き落とされていくような、厳しい展開だった。
シーディー・ラム選手もジョージ・ピケンズ選手も先発していて、彼らのビッグプレイが時折飛び出すものの、オフェンスの良いプレイは継続せず、観ていてフラストレーションがたまっていった。
その後、デンバーのタッチダウンと2ポイントコンバージョン失敗を経てスコアは10対20となり、自陣25ヤードライン近辺からカウボーイズは攻撃のチャンスを得た。ファーストダウンでカウボーイズはパスを狙ったが、レシーバーが守備を振り切れず、QBのプレスコット選手は急遽スクランブルに切り替えて9ヤードを獲得した。
次のプレイでウィリアムズ選手は中央突破のランを試みるものの、往年の「オレンジ・クラッシュ」ディフェンスを彷彿とさせるような形でブロンコスの守備陣が集団で立ちはだかり、ウィリアムズ選手はオレンジ色の人波にはじき返され、数ヤード後退したかのように見えたが、審判団の寛大な判断で結果はノーゲイン。セカンドダウンのプレイがうまくいかない[3]のは、カウボーイズ・オフェンスの調子が悪いときの典型的なパターンである。
サードダウン残り1ヤードでカウボーイズはパスを選択するが、これがあわやインターセプトされそうな危ないプレイだった。自陣29ヤードからフォースダウン残り1ヤードの状況でカウボーイズはパント[4]を選択してしまった。
他にも、ファーストダウンでプレスコット選手が2ヤードを獲得したものの、次にケボンテ・ターピン選手へのスクリーンパスが相手に読まれて、数ヤード後退したのち、サードダウン残り10ヤードでブロンコスのプレッシャーを受けてパスが通らず、パントを強いられたような局面もあった。
ヘッドコーチにはもっと積極的にフォースダウンでギャンブルしてもらいたかった。ブロンコスにボールを渡せば、70パーセント(というより80パーセントから90パーセント?)位の確率でタッチダウンを決められそうに思えるぐらい、この日のカウボーイズ・ディフェンスの調子[5]は悪く、頼りなかった。
SNSの一種、サブスタックのチャットで、カウボーイズはパンターを負傷者リスト登録して、今シーズンの残りはもう一切パントはせず、必ずフォースダウンでギャンブルした方がいい、というようなカウボーイズ・ファンの書き込みがあった[6]が、同感である。カウボーイズはディフェンスをフィールドに出す回数や時間を減らすことを最優先にして試合を進めたほうがいいように思う。
次の2試合はアリゾナ・カーディナルスとラスベガス・レイダーズが相手である。シーズン後半には強敵との対戦が控えているだけに、ここで2連勝しておかないと、プレイオフどころかシーズンを勝ち越しで終わることが難しくなりそうな気がする。
来週、2025年シーズン第9週は現地時間月曜日夜の試合で、カウボーイズはカーディナルスをホームに迎える。日本時間11月4日(火曜日)午前10:15キックオフ予定である。走れるクォーターバック、カイラー・マレー選手を擁するカーディナルス相手にカウボーイズのディフェンスはどのようなプレイを見せてくれるのだろうか。
第10週はカウボーイズのバイウィークのため、試合はない。
第11週はこれまたマンデーナイトの試合で、レイダーズの本拠地で日本時間の11月18日午前10:15にキックオフ予定である。シアトル・シーホークスのヘッドコーチとしてシーホークズの黄金時代を築いたピート・キャロル氏が率いるレイダーズには、スピーディーで切れ味鋭いランが得意な、今年のドラフト1巡目指名のアシュトン・ジェアンティ選手(RB)がいる。
QBのジーノ・スミス選手は今シーズンまだ波に乗れていない印象だが、油断は禁物である。レイダーズ・ディフェンスのスターはディフェンシブエンドのマックス・クロズビー選手で、カウボーイズが最近、彼をトレードで獲得しようとしてレイダーズに接触した、というような憶測も飛び出している。(期待先行の話で、あまり実現可能性はないような気がする。)
こうやって考えてみると、カーディナルスもレイダーズもカウボーイズにとっては手強い相手となりそうだ。なんとかオフェンス、ディフェンス共に復調してもらって、カウボーイズにはいい戦いぶりを見せてもらいたい。
[1] それでも結局、24対44の大差で負けた。点差以上に一方的な試合に感じられた。
[2] この点差を見た瞬間、デンバーのディフェンスを前にクォーターバック(QB)のダック・プレスコット選手が苦戦していそうだな、と応援していて弱気になった。
[3] こういう時のカウボーイズはセカンドダウンに本当にろくなことがおきない。いっその事、「セカンドダウンは辞退します」とか申告してサードダウンから始められればいいのになあ、と理不尽な空想をしてしまう。
[4] 自陣のエンドゾーンから29ヤードで、フィールドポジション的にはギャンブルするのは分が悪いという判断だったのかもしれないが、残りわずか1ヤードである。QBスニークでもファーストダウンを更新できたのでは、と思ってしまう。
[5] コーナーバックのトレボン・ディッグス選手に加え、先発セイフティのマリク・フッカー選手とドナバン・ウィルソン選手を2人とも怪我で欠いていたのも痛かったが、彼らが先発していたとして、情勢に大きな変化はなかったのでは、と想像してしまう。カウボーイズのディフェンシブラインが、売り出し中のブロンコスの若手クォーターバック、ボー・ニックス選手にプレッシャーをかけられなかったのが致命的な感じがした。
[6] この試合のあの場面ではパントすべきでなかった、といった趣旨の意見はX上でも散見された。ESPNのNFL担当アナリストで元デトロイト・ライオンズQBのDan Orlovsky氏の投稿など。
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