【NFL観戦記】2025年 第11週 ダラス・カウボーイズ対ラスベガス・レイダース

ダラス・カウボーイズに加入して2年目、24歳のディフェンシブ・エンド、マーショーン・ニーランド選手が11月6日に亡くなったとの悲しい報せ[1]の後、カウボーイズにとって最初の試合となった。

また、第9週でアリゾナ・カージナルス相手に惨めな敗戦を喫したあと、カウボーイズはトレードでディフェンシブ・タックルのクイネン・ウィリアムズ選手をニューヨーク・ジェッツから、そしてラインバッカ―のローガン・ウィルソン選手をシンシナティ・ベンガルズから獲得した。彼らにとって、カウボーイズの一員としてのデビュー戦でもあった。

さらに、膝の靭帯を負傷した後一年間のリハビリを耐え抜いたラインバッカ―のデマービオン・オーバーショーン選手、膝に負傷を抱えたまま今年ドラフト3巡目で指名された新人コーナーバック、シャボン・レベル選手、そして負傷欠場中だった先発セイフティのドナバン・ウィルソン選手3人の復帰戦でもあった。

チームとしていかに団結し、前に進んでいくのか、注目が集まる試合となった。

試合当日の朝にNFLゲームパスを開いたところ、第1クォーター残り10分でカウボーイズの攻撃中だった。フィールドポジションは自陣13ヤードラインでセカンドダウン残り1ヤード、両チームまだ得点なし、という場面。そこでランニングバックのジャボンテ・ウィリアムズ選手にボールが渡り、中央突破で数ヤード獲得した。カウボーイズはファーストダウンをかろうじて確保し、見ていてほっとした。

次のプレイはダラスの16ヤードラインからの攻撃。ハンドオフのフェイクを入れた後、クォーターバックのダック・プレスコット選手はドロップバックし、パスの態勢に入った。右フラットにRBのウィリアムズ選手が走り出し、そこにパスを出すのかと思いきや、プレスコット選手の視線はフィールド中央奥に向けられていた。ただ、空いているレシーバーが見つからない様子で、そうこうしているうちにラスベガス・レイダースのディフェンスのエース、マックス・クロズビー選手に後ろから飛び掛かられて、万事休す。ボールをはたかれて前にファンブルし、レイダースがリカバーした。あっと言う間のターンオーバーだった。

この時点でカウボーイズがまだ無得点だったことが気がかりだった[2]が、幸いまだ第1クォーターの話である。両チームとも地力を発揮し出すのは第2クォーターだろう、と自分に言い聞かせながら、いったんゲームパスを閉じた。

次に状況を確認したときは第2クォーターでスコアはなんと24対6でカウボーイズがリードしていた。その後、レイダースは前半終了間際にフィールドゴールを決めて24対9でハーフタイムに突入する形となったが、それでも15点差である。しかもカウボーイズの失点はなんとわずか一桁!あっさりと逆転した上に、点差もつき、拍子抜けしてしまった。

ということで後半もカウボーイズのペースで試合は進み、33対16でレイダース相手に完勝を果たす結果となった。これでカウボーイズのシーズン通算成績は4勝5敗1分けとなり、まだプレイオフ出場は厳しい状況だが、勝率5割復帰に手が届きそうなところまで立ち直ってきた。

クイネン・ウィリアムズ選手とローガン・ウィルソン選手の加入、そしてオーバーショーン選手、レベル選手、ドナルド・ウィルソン選手の怪我からの復帰により、カウボーイズのディフェンスはずいぶん安定感が増したように見受けられた。ウィリアムズ選手は早速1.5サックと気を吐いたし、ディフェンシブ・タックルのケニー・クラーク選手とオサ・オディギズワ選手もサックを決めるなど、この試合のカウボーイズのパスラッシュには迫力があった。

また、最近台頭中の新人のディフェンシブ・エンド、ドナバン・エゼイラク選手がレイダース反撃の気運をくじき、流れを再度カウボーイズに引き寄せる貴重なセイフティを試合後半に決めるなど、頼もしい活躍を続けていることも、好材料である。

オフェンスではRBのウィリアムズ選手は22回のランで93ヤードを獲得し、WRのピケンズ選手は9回のパスキャッチで144ヤードとタッチダウンを1回、ラム選手は5回のパスキャッチで66ヤードとタッチダウンと1回を決め、ラン、パス攻撃共に破壊力があった。特にピケンズ選手はパスを取ってからのランが素晴らしく、レイダースの選手が数人がかりで飛び掛かってきてもそれを振り払う形で突き進み、ヤード数を稼いでいた。また、左サイドからカールのような形で、フィールド中央付近でパスをキャッチした後、スムーズに反転し、左斜め前のサイドライン方向に走り出し、「ああ、ここでレイダースのディフェンシブ・バックにタックルされるな」と観客全員が思ったその瞬間、素早く右に方向転換して相手選手を二人置き去りにし、華麗なタッチダウンを決めるなど、見ていて思わずため息が漏れそうになる大活躍を見せてくれた。

QBのプレスコット選手はパス33回のうち25回を成功させ、268ヤードを獲得し、パス1回あたりの平均獲得ヤード数は8.1と好成績を上げた。さらにタッチダウンパスも4回決め、ファンブルは1回あったもののインターセプトはされず、効率のよいパス攻撃を展開できた。

さて、問題はシーズン残りの対戦相手で、次週は宿敵フィラデルフィア・イーグルスをホームに迎える。ここで勝って2連勝できないとポストシーズン出場はおぼつかないと思うが、いかんせんイーグルスは強い。ただ、イーグルスのオフェンシブラインの要、タックルのレイン・ジョンソン選手が今週の試合で足を負傷し、4週間から6週間欠場するかもしれない[3]、と報道されている。もしそうならば、カウボーイズのディフェンスにとって、追い風となるかもしれない。

いずれにせよ、イーグルス戦の後、カウボーイズはカンザスシティ・チーフス、デトロイト・ライオンズ、ミネソタ・バイキングス、ロサンゼルス・チャージャーズ、と強豪相手の試合が続き、イーグル戦も含めると厳しい試合が5試合連続で続く。

この5試合をなんとか3勝2敗以上の成績で乗り越えられれば、7勝7敗1分け以上で、シーズン残り2試合を迎えられる。

そうなると、アメリカのクリスマス当日にワシントン・コマンダーズの本拠地での試合とレギュラーシーズン最終戦はニューヨーク・ジャイアンツとの試合を残すところとなり、これらNFC東地区のライバル2チームが選手の負傷に苦しめられている状況等を鑑みると、9勝7敗1分けという、2週間前には想像できなかったような勝ち越しの可能性も見えてきそうだ。

そのような、前向きな展開に向けて、果たしてカウボーイズはうまく道を切り拓けるのだろうか。イーグルスをホームに迎えての試合は、日本時間の11月24日(月曜日)午前6時25分にキックオフする。


[1]カウボーイズ公式サイトの記事など 各種報道によると、カウボーイズは試合当日ニーランド選手の顔写真入りのTシャツを着用し、試合中はヘルメットの後ろにニーランド選手の背番号94を付けるなどして、チームとして追悼の意を表し試合に臨んだ、とのこと。”Jerry Jones, Dak Prescott and more react to emotional win after loss of Marshawn Kneeland,” Tommy Yarrish, DallasCowboys.com, Nov. 18, 2025.

[2] 後になって知ったが、カウボーイズが誇るリーグ有数のワイドレシーバー・コンビ、シーディー・ラム選手とジョージ・ピケンズ選手は、ヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマ―の判断でベンチ・スタートとなり、カウボーイズ最初の攻撃への参加は許されなかった、とのこと。ショッテンハイマ―氏は試合後の記者会見で、いくつか無断欠席があった、ともとれるような説明をしていた。(“Couple things missed.”とだけ述べていて、詳細についての言及は避けていた。)その後の報道によると、ラム選手とピケンズ選手はチームが宿泊していたホテルから外出した後、宿舎に戻るのが遅くなり、門限に間に合わなかったようだ。“CeeDee Lamb says he and George Pickens were disciplined for missing curfew,” Jon Machota, The Athletic, Nov. 21, 2025.

[3] “Eagles All-Pro tackle Lane Johnson has Lisfranc sprain, could be out 4-6 weeks: source,” Jayna Bardahl and Zach Berman, The Athletic, Nov. 18, 2025.

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