【NFL観戦記】2025年第12週 ダラス・カウボーイズ対フィラデルフィア・イーグルス

 本日11月24日(月曜日)は祝日、しかも気持ちのいい晴天で、絶好のTV観戦日和である。気合を入れてキックオフ時間きっかりにNFLゲームパスを開くと、イーグルスがコイントスに勝ち、キックする事を選択したという。「後半最初の攻撃はイーグルスからか」と内心テンションが下がったが、気を取り直して画面に集中する。

 ダラスの最初のプレイはランニングバックのエース、ジャボンテ・ウィリアムズ選手によるラインやや左側へのラン。すぐにイーグルスの強力なディフェンシブ・ラインに行く手を阻まれ、2ヤード獲得に留まった。「ダラスはなぜこうファーストダウンは決まってランなのか[1]」と悪態をつきながら次のプレイに目を向ける。

 ここでダラスの鬼門ともいえるセカンド&ロングである。どんなプレイコールが待っているのか、「ここで2プレイ連続のランはやめてほしい」と祈りながら画面を凝視すると、最近絶好調のワイドレシーバー、ジョージ・ピケンズ選手が左側からスラントを走り、クォーターバックのダック・プレスコット選手がそこへタイミングよくパスを投げ込み、あっさりファーストダウンを獲得した。

「いいスタートだ!」と早くも2連勝への期待が高まったが、残念ながらその後カウボーイズの攻撃は停滞し、フォースダウンで残り3ヤードとなった。フィールドポジションは50ヤードラインの少し手前ぐらい。フォースダウン・ギャンブルを期待する気持ちと、流れが今ひとつだからパントでもいいか、と思う気持ちが半々だったが、ヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマ―はここで大胆にもギャンブルを選択する。プレスコット選手はフィールド奥を見つめながら、ポケット内でステップを繰り返すが、空いているレシーバーは見つからず、最終的に中央手前のウィリアムズ選手にめがけてボールを投げた。左手から走り込んできたウィリアムズ選手は身体と両腕を伸ばし、右手方向にダイブする。取れればファーストダウンの場面だったが、惜しくも届かず、ボールはイーグルスに渡った。

 この場面が、カウボーイズにとって前半のハイライトとなってしまった。

 イーグルスはそのままタッチダウンとポイントアフターを決め、0対7と先制する。

 次にゲームパスを開いた時は第2クォーター残り3分35秒で、スコアは0対21とイーグルスが一方的にリードしていた。「先週のレイダース戦の勝利でカウボーイズは勢いに乗ってくれると信じていたが、期待外れだったか」と、晴天の祝日に二連勝を期待して盛り上がっていた気持ちは大きくしぼんだ。

 試合後半はプレイごとの記録をつけることに集中してみようか、と気を取り直して再度ゲームパスを開くと、第3クォーター残り9分30秒ぐらいだったろうか、7対21でダラス自陣10ヤード近辺からの攻撃の場面だった。「ここからタッチダウンできれば14対21だ」と一気にボルテージが上がる。

 そこからカウボーイズはランとパスを織り交ぜながらジリジリ前進し、途中、控えランニングバックのマリーク・デービス選手が怒涛の中央突破ラン攻撃で20ヤード程度一気に獲得し、フィールドゴールを狙える位置まで前進を果たす。その後サードダウンでシーディー・ラム選手へのパスが、ちょうど第1クォーターのウィリアムズ選手へのパスと左右逆転させたようなシチュエーションで、ラム選手は左方向に身体を伸ばして飛び込んだが、あと一歩のところで届かなかった。

「まあでもブランドン・オーブリー選手がフィールドゴールを決めてくれるだろう」と期待したのも、つかのまだった。ボールがスナップされ、オーブリー選手がキックした直後に、スタジアムの観客から悲鳴が漏れる。画面を凝視し、状況を確認すると、審判は無情にも両腕を水平に交差させながら振っていて、フィールドゴールはまさかの失敗に終わった。いろんな大ピンチの場面で驚異の長距離キックを次々に決め、チームを救ってくれたオーブリー選手も人間だ、不成功になる事があっても仕方がない、と落胆しながらいったんゲームパスを閉じた。

 今現在24日の午前9時12分。ゲームパスを開くと第4クォーター残り10分で21対21の同点ではないか。マジか!

 イーグルスの攻撃中である。その後、パスでジリジリ前進して、カウボーイズ陣内28ヤードラインからセカンドアンド7でイーグルスのレシーバー、デボンタ・スミス選手への左サイドライン際の見事なパスが決まり、ジャンプして着地したスミス選手を見て、うわぁーと悲鳴を漏らしたが、イーグルスのオフェンシブラインの選手のイリーガル・ユース・オブ・ハンズの反則でセカンドダウン残り17ヤードからやり直し。

 そこでイーグルスは左手前、エースランニングバックのセイクワン・バークレー選手へパスを出すが、カウボーイズの選手が数人がかりで飛び掛かり、ディフェンシブ・エンドの54番サム・ウィリアムズ選手がファンブルを誘い、カウボーイズの59番、ラインバッカ―のケネス・マレー選手がリカバー!

ディフェンシブ・エンドのサム・ウィリアムズ選手は貴重な場面でイーグルスのファンブルを誘う活躍を見せてくれた。今シーズン後半のさらなる飛躍のきっかけとなるか。

 カウボーイズのサイドラインではディフェンシブ・コーディネーターのマット・イーバーフラスがガッツポーズを繰り返す。

 残念ながら、その後のカウボーイズの攻撃はイーグルスの強靭なディフェンスに阻まれ、カウボーイズは自陣40ヤード近辺からパントする事となった。それでもダラスのディフェンスによるターンオーバーは素晴らしかったし、まだまだこれからだ、と思いながら画面に目を向けると、イーグルス陣内7ヤード近辺でカウボーイズのカバレッジ・チームがイーグルスのパントリターン選手に襲い掛かり、ファンブル!ダラスのロングスナッパー、背番号44のトレント・シーグ選手がボールをリカバーした。

現地の観客そして、画面越しに見る者のテンションが上がりまくる中、だがしかし、ダラスはそこからなんと得点をできず、イーグルスにボールを戻してしまう。サードダウンでラム選手を狙ったエンドゾーンへのパスをラム選手が取り切れず、フォースダウンでタイトエンドのジェイク・ファーガソン選手へのパスは2ヤードラインで止められてしまった。

 イーグルスは自陣2ヤードラインから、パスを2回連続で決め、早くも自陣29ヤードラインまでボールを戻し、試合は残り2分。

イーグルス陣内37ヤードからイーグルスの強靭で冷静なクォーターバック、ジェイレン・ハーツ選手がドロップバックするが、そこでカウボーイズのディフェンシブ・タックル、背番号97のオサ・オディギズワ選手が見事なサックを決める。

 イーグルスのパントの後、カウボーイズは自陣27ヤードラインからの攻撃。ファーストダウンはタイトエンドのジェイク・ファーガソン選手へのパス。ファーガソン選手は7ヤード程度獲得していたが、そこからガッツあふれるプレイでイーグルス選手を背中に抱えながらさらなる前進を試みるものの、痛恨のファンブル。幸い、ボールは転がりながらサイドラインを割り、ポゼッションは変わらず。

 その後ファーガソン選手へパスが決まり、ファーストダウンを獲得し、残り52秒でイーグルス陣内46ヤード近辺まで前進し、フィールドゴールに手が届くところまで到達する。

 ただ、ピケンズ選手は数プレイ前に脚を負傷したようで、サイドラインで脚を少し引きずりながら待機しているし、エースレシーバーのラム選手はこの試合、エンドゾーンでパスを捕球しきれないなど、本調子ではなさそうで気がかりである。サイドラインではラム選手が一人でベンチに座り、不機嫌な様子で誰とにでもなく、恐らく自分自身に対するいら立ちの現れだろうが、どなっているような映像も流れ、この大事な場面でプレスコット選手はラム選手に果たしてパスを投げられるのだろうか、と心配になった。そういった状況でパスを取りファーストダウンを獲得したファーガソン選手のプレイは、エースがピンチのなかチームを救うような活躍で、頼もしく感じられた。

 ダラスはタイムアウトなしの状況でプレイコールはウィリアムズ選手のラン攻撃だったが、ノーゲインに終わる。「え、タイムアウトなしなのに本当にここはランでいいのか、すぐにまた並んでパスして時計を止めなくていいのか。ここでカウボーイズ恒例のクロックマネージメントのまずさが出てしまうのか」と内心焦ったが、イーグルスがタイムアウトを取り[2]45秒で時計は止まった。

 セカンドアンド10。

 ピケンズ選手が右手からスラントを走り、プレスコット選手からドンピシャのパスが通り、イーグルス陣内20ヤード近辺でファーストダウンを獲得!イーグルスはここで再度タイムアウトを取る。

 カウボーイズは残り時間を最小限にまで減らすために、一度ニールダウンをした後、残り3秒のところでプレスコット選手はボールを地面に投げつけて時計を止めた。

 スペシャルチームに選手が入れ替わり、整列する。「ボールをホールドする選手はこういう時、手に汗をかいてボールが滑ったりしないのだろうか」といらぬことを考えてしまう。この試合、一度フィールドゴールを失敗しているキッカーのオーブリー選手はこういう場面では決めてくれるだろう、と見ていて不安はあったものの、どこか安心感もあった。

 カウボーイズのTシャツとスエットを着ながら、TV画面の方を向いて立ちあがり、「みんなそれぞれの仕事をしっかりやるだけ。みんなきっとできる」などと口走りつつ、握る両手のこぶしに思わず力が入った。

 ボールがスナップされ、キックの後ゴールポストに向かって飛んでいく様子が画面に映る。やや右よりで一瞬ヒヤッとしたが、無事審判の両手が上がった。24対21とカウボーイズは、この日初めてリードを握り、試合終了。その瞬間は興奮したというより、ほっとした感じだった。

 これでカウボーイズの今シーズン通算成績は、5勝5敗1分けで勝率五割に復帰した。ラム選手の調子が心配だったが、カウボーイズの公式サイトによると4回パスキャッチを決め75ヤードを獲得し、しっかり結果を残しているところは流石である。ピケンズ選手の好調は続き、パスキャッチ9回で146ヤードを獲得し、タッチダウンキャッチも1回と、非の打ちどころがない活躍ぶりである。タイトエンドのファーガソン選手はパスキャッチ5回で60ヤードを獲得した。

 QBのプレスコット選手はパスを試みた36回中、23回成功させて354ヤードを獲得した上に、タッチダウンパスも2回通すことに成功した。インターセプションが1回あったものの、パス1回あたりの平均獲得ヤードは9.8を記録するなど、強敵相手に非常に効率の良いパス攻撃となった。

 さてカウボーイズは今週もう一試合、サンクスギビングの日にこれまた今週劇的な形で今シーズンのシンデレラ・チーム、インディアナポリス・コルツをオーバータイムで破って勢いに乗りそうな、カンザスシティ・チーフスをホームに迎える。イーグルスを21点に抑えたカウボーイズ・ディフェンスは、チーフス相手にどのような戦い方を見せてくれるのだろうか。そして魔術師のようなクォーターバック、パトリック・マホームズ相手にどのようにしてプレッシャーをかけていくのだろうか。

 イーグルスに勝てたのだから、チーフスが相手でも勝算はある、と期待しつつ、日本時間11月28日(金曜日)午前6:30のキックオフを楽しみに待ちたい。


[1] 特に試合開始直後はその傾向が強いような個人的な思い込みがあるのだが、実際のところはどうなのだろうか。一度試合を通して記録をつけて確認してみたい。

[2] ここでイーグルスがタイムアウトをとったのは定石どおりで冷静な判断だったと思うが、もしここでイーグルスがタイムアウトをとらなければカウボーイズは結構ドタバタして焦ったのではないだろうか、と試合直後の今になって思う。

Tags:

コメントを残す