海外の書評記事で最近取り上げられ、興味を惹かれた三冊:
- One of Us by Elizabeth Day, Viking, 336 pages. (Wall Street Journal)
- White River Crossing by Ian McGuire, Crown, 288 pages. (Wall Street Journal)
- Polar War by Kenneth Rosen, Simon & Schuster, 320 pages. (The Economist)

書評①‘One of Us’ Review: Dirt and Downing Street Book Review by Anna Mundow, Wall Street Journal online edition, Feb. 13, 2026.
紹介されている本:One of Us by Elizabeth Day, Viking, 336 pages.
気になった書評の一本目は、最近ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載されたアンナ・ムンドウ氏の書評記事で、“One of Us” という題名の、英国政界を舞台にした小説を取り上げている。ムンドウ氏によると、エリザベス・デイの作品であるこの小説のテーマは「政治的野心と個人的復讐」とのこと。そのような獰猛さをまったく持ち合わせていなさそうな「遠慮がちな美術史家」が、この物語において報復を実行することになるとのことである。
その「報復者」はイギリスの大学で教鞭をとる人物で、名前はマーティン・ギルモアという。表向きはおとなしそうだが、実際には周りの人間に対し常に批判の目を向けるタイプ、とのことである。母校のケンブリッジ大学で「貴族的な」ベン・フィッツモーリスと友達になり、ベンが飲酒運転で死亡事故を起こした際には、同乗していたマーティンがその罪をかぶるかわりにフィッツモーリス家から金銭を受け取った、という経緯があるそうだ。数十年後、ベンはエネルギー政策を担当する大臣を務め、次期首相と目されるようになる、という設定でストーリーは展開していくらしい。
この物語の核心には「卑劣な犯罪」が関わっている、とのことで、結構ダークなストーリーのような印象を受ける。
著者のエリザベス・デイはフィクションとノンフィクションの著作がある作家。
“How to Fail With Elizabeth Day”という、著名人の失敗経験についてインタビューし、そこから得た学びについて語り合うポッドキャストを主催しているそうだ。[1]

書評② ‘White River Crossing’ Review: Golden North Book Review by Anna Mundow, Wall Street Journal online edition, Feb. 13, 2026.
紹介されている本:White River Crossing by Ian McGuire, Crown, 288 pages.
今回取り上げる2本目の書評記事は、これまたアンナ・ムンドウ氏がWSJに寄稿した作品で、そこで紹介されているのは “White River Crossing”という題名の、18世紀後半の北米における動物の毛皮取引をテーマにした小説だ。著者のイアン・マグワイアにとって、本書は四作目の小説で、2016年の『北氷洋 The North Water』は2016年のブッカー賞の候補作となった、とのことである。[2]
主人公はマグナス・ノートンという名前の、ハドソンズ・ベイ・カンパニーという英国企業のカナダ拠点、プリンス・オブ・ウェールズ基地のトップを務める男。ムンドウ氏によると、金持ちで優雅な生活を送るマグナスは、「それでもまだ強欲だった」とのことである。
ある日、マグナスの元に、金が表面に混じった黒い大理石が持ち込まれる。彼は直ちに、その金が発見された500~600マイル離れた場所へと捜索隊を派遣する。
ムンドウ氏の記事によると「そこからは、周到に作られ絶妙なペースで展開するクエスト物語が展開され、その犯罪満載のストーリーが新たな進展をみせるごとに、ぐいぐい引き込まれそうになる」とのこである。
非常にスリリングな展開が味わえそうな小説である。

書評③ Polar Madness: What to read to understand the future of the Arctic The Economist, Jan. 31 – Feb. 6, 2026 issue, 76-77 pp.
紹介されている本: Polar War: Submarines, Spies, and the Struggle for Power in a Melting Arctic By Kenneth Rosen, Simon & Schuster, 320 pages.
三本目の書評記事は、イギリスのエコノミスト誌に掲載された作品で、そこで取り上げられているのは “Polar War” という題名のノンフィクションの本。著者のケネス・ローゼンは、イラク、シリア、ウクライナなどの報道で受賞歴を持つジャーナリストで、過去にはニューヨーク・タイムズやニューズウィークに所属していた時期もあったそうだ。[3]
ローゼン記者は今回の著作で、北極を巡る国際競争に焦点を当てているという。本書は北極の周辺地域を取材したルポルタージュで構成されていて、取材現場はアラスカやノルウェーの島、そしてアメリカのドナルド・トランプ大統領が領有に意欲を見せ、欧州諸国の反発を招く状況となっている、デンマークの自治領グリーンランドなど多岐にわたる、とのことである。
エコノミストの書評記事によると、本書の焦点の一つは、地球温暖化により北極の氷が解け、新たな海上航路が生まれる中、そしてロシアのウクライナ侵略と2014年のクリミア併合をきっかけとし、ヨーロッパで新たな軍事競争が起きる中、北極を巡る競争が激しくなりつつある、という点なのだそうだ。北極に対する中国の関心とプレゼンスが高まりつつある点も取り上げられているとのことである。
また、著者が本書を通じ明らかにしているのは、ヨーロッパの同盟諸国抜きでアメリカは北極で成功を収めることはできない、ということだと、エコノミスト誌は記事の中で指摘している。
著者は、ベーリング海で活動するアメリカのコーストガード船に乗船しながら本書の出だしの文章を執筆した、と序文の中で述べている。北極における地政学的競争の実情や、その背景を理解する上で手助けとなりそうな作品ではないだろうか。
[1] 経歴に関しては著者のウェブサイトを参照した。
出典:https://www.elizabethday.org/about
[2] 著者の経歴に関しては、新潮社のウェブサイトおよび University of Manchester, Centre for New Writingの教員紹介ページを参照した。
出典1:https://www.shinchosha.co.jp/writer/6263/
出典2:https://www.alc.manchester.ac.uk/centrefornewwriting/about/our-people/ian-mcguire/
[3] 経歴に関しては、著者のウェブサイトを参照した。
出典:https://kennethrrosen.com/
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