
アメリカンフットボールのプロリーグ、 National Football League(NFL)の2024年シーズンが先日開幕した。昨年のスーパーボウル優勝チーム、カンザスシティ・チーフスがボルチモア・レイブンズを27-20の僅差で破るなど[1]、いきなり白熱した展開になっている。
自分が応援しているダラス・カウボーイズは、現地時間の9月8日にクリーブランド・ブラウンズの本拠地で開幕戦を迎え、33-17で勝利し、幸先の良いスタートとなった。
カウボーイズは1970年代に第一黄金期を迎え1971年と1977年のシーズンにスーパーボウル優勝を果たした後、1980年代の前半に3シーズン連続でスーパーボウル一歩手前のNFCチャンピオンシップまで勝ち進んだものの、3年連続そこで敗退。(その2年目、1981年シーズンのNFCチャンピオンシップでは、「ザ・キャッチ」と呼ばれる、ジョー・モンタナからドワイト・クラークへの、試合終了まで58秒のところで出た、奇跡的なタッチダウンパスにより28-27で敗れた。[2])
そのプレイがチームのその後の運命を決定づけたかのごとく、1980年代後半以降は低迷し、1989年にジミー・ジョンソンが新ヘッドコーチに就任。

(表紙左側に写っているのが1960年から1988年まで、カウボーイズ初代ヘッドコーチだったトム・ランドリー氏。)
NHKが昔、NFLを衛星放送で放映し始めたのもたしか1989年で、その最初の放映予定は(ジョンソンと、ドラフト全体1位指名で獲得した新QBトロイ・エイクマンの初の公式戦でもある)ダラス対ニューオーリンズの試合だったのだが、ダラスは0対28とぼろ負けしたため、急遽別の試合が放映され、ダラスの試合はダイジェストで大幅に短縮された内容が放映されたのを見た記憶が残っている。

その年はチーム史上最低の1勝15敗でレギュラーシーズンを終えたのだが、シーズン途中でチームのエース・ランニングバック(RB)のハーシェル・ウォーカーをトレードで放出し、上位ドラフト権を複数獲得。
1991年には、キャリア最多ラン獲得ヤードの記録を打ちたてる事になるRBエミット・スミスをドラフト一巡目で獲得し、オフェンシブ・コーディネーターにノーブ・ターナーを迎え、QBエイクマン、RBスミス、ワイドレシーバー(WR)マイケル・アービンの「三人衆」[4]が完成し、黄金時代に突入。

1992年シーズン、1993年、1995年と4年間で3度スーパーボウルに優勝し、あと2.3回は優勝を狙えるのでは、と期待されたが、オーナーのジェリー・ジョーンズと仲違いしたジョンソンが1993年のスーパーボウル優勝後にヘッドコーチを辞任した後、チームの成績は下降し始める。

(1992年シーズンのスーパーボウル優勝後、このスキップ・ベイレスの著作を抜粋した記事が雑誌に掲載され、そこで初めてチームオーナーのジェリー・ジョーンズとヘッドコーチのジミー・ジョンソンがいがみ合っていた事を知った。それでもコンビを続けると思っていたのだが。。。)
結局その後29年間、チームはスーパーボウルどころか、その一歩手前のNFCコンファレンス・チャンピオンシップにさえ出場できていない。
ただ、ここ3年間はレギュラーシーズンで毎年12勝と好成績を挙げている。今年はさらに飛躍して、ついにスーパーボウル優勝を果たせるのだろうか?
自分の期待も込めた予想は次の通り。
1週目:クリーブランド・ブラウンズ(アウェー)。 17-23ぐらいで負けるかな、と思ったら、蓋をあけるとなんと33-17で完勝。今年はむちゃくちゃ強いかも、と期待してしまうような想定外の強さだった。
ルーキー二人が加入したオフェンス・ラインが昨年リーグ1位だったブラウンズのディフェンス相手に健闘する[5]一方、ダラスのディフェンスは去年に比べ、ランに対する強靭さとフィジカル面で相手を圧倒しにかかるアグレッシブさが、観戦していて目立った。今シーズンからマイク・ジマー[6]がディフェンシブ・コーディネーターに就任した事の好影響が早くも出ているようだ。
2週目:ニューオーリンズ・セインツ(ホーム)27―20で勝利か。
初戦でセインツはランの獲得ヤードが180ヤード[7]だったらしい。昨年ランに対する守備が弱点だったディフェンスの真価が問われそう。厳しい展開になるかも。
3週目:ボルチモア・レイブンズ(ホーム)17―21で敗北か。
勝てばカウボーイズに対する見方が変わりそうな試合だが、レイブンズは強敵。
4週目:ニューヨーク・ジャイアンツ(アウェー)31―17で勝利か。
5週目:ピッツバーグ・スティーラーズ(アウェー)13―16で敗北か。
6週目:デトロイト・ライオンズ(ホーム)27―17で勝利か。
7週目:試合なし。
8週目:サンフランシスコ・49ers (アウェー)16―24で敗北か。
9週目:アトランタ・ファルコンズ(アウェー)33対10で勝利か。
10週目:フィラデルフィア・イーグルズ(ホーム)27-21で勝利か。
11週目:ヒューストン・テキサンズ(ホーム)31-24で勝利か。
テキサンズは2年目のクオーターバックが早くもリーグ有数の選手として期待されている勢いのあるチーム。ホームなので辛勝か。
12週目:ワシントン・コマンダーズ(アウェー)30-16で勝利か。
コマンダーズは初戦を落としたが、昨年までダラスのディフェンシブ・コーディネーターを務めた新ヘッドコーチ、ダン・クインのもと、シーズン後半に上昇気流に乗っているかもしれないので、要注意。
13週目:ニューヨーク・ジャイアンツ(ホーム)31-10で勝利か。
14週目:シンシナティ・ベンガルズ(ホーム)21-23で敗北か。
ベンガルズも地力のあるチームで、リーグ有数QBのジョー・バロー相手に苦戦しそう。
15週目:カロライナ・パンサーズ(アウェー):27-13で勝利か。
16週目:タンパベイ・バッカニアーズ(ホーム):33-26で勝利か。
17週目:フィラデルフィア・イーグルズ(アウェー):20-30で敗北か。
18週目:ワシントン・コマンダーズ(ホーム):28-17で勝利か。
レギュラーシーズンは12勝5敗。もしそうなれば4シーズン連続12勝の快挙。
オフェンス総得点:445 ディフェンス総失点:322 得失点差:+123
(2023年[8]:オフェンス509得点 ディフェンス315失点 得失点差+194)
NFC東地区で1位になり、ディビジョナルプレイオフとNFCチャンピオンシップゲームで勝利し、1995年以来のスーパーボウル出場&優勝、となると素晴らしいが、果たして。
[1] 2022年ワールドカップの三苫薫選手がゴールラインぎりぎりからアシストを決めた時を逆の意味で彷彿とさせるような、パスキャッチをしたレイブンズの選手の足がエンドゾーンからぎりぎり出てしまいTDが不成立となる超際どいプレイで、辛くも逃げ切った。”Isaiah Likely, Ravens Miss Last Second Game Tying Touchdown vs. Chiefs by an Inch,” By Tom Dierberger, Sports Illustrated, Sept. 6, 2024, Accessed on Sept. 14, 2024. https://www.si.com/nfl/isaiah-likely-ravens-miss-last-second-game-tying-touchdown-vs-chiefs-by-inch
[2] 1981年シーズンのプレイオフで1982年1月10日に行われた試合。「ザ・キャッチ」の後、カウボーイズは50ヤードライン近辺まで攻め上がり、フィールドゴール・レンジまで後一歩のところだったが、最後はクオーターバックがサックされて負けたように記憶している。冷静で普段は表情を崩さない事で有名だったヘッドコーチのトム・ランドリーが、試合直後のTVインタビューで涙を浮かべていたような記憶もある。自分は子供の頃テレビ観戦したが、前半で興奮しすぎて後半は気分が悪くなり、「ザ・キャッチ」やトム・ランドリーの試合後のインタビューは寝ながら見るはめに。踏んだり蹴ったりの試合だった。「ザ・キャッチ」について49ersのウェブサイトに詳しい説明がある。
[4] 三人の総称として”triplets”と言われていた。三人のうち誰が一番チームにとって重要か、という話が良く出たが、3人とも素晴らしい活躍をした。
[5] ダラスが大勝したこともあり、自分にはそう見えたが、実際には昨シーズンのNFL守備部門最優秀選手、マイルズ・ギャレット相手に苦戦した面もあったようだ。
[6] 20年程前にもダラスでディフェンシブ・コーディネーターを務めていた。ミネソタ・バイキングスをヘッドコーチとして率いるなどした後、今年ダラスに復帰。
[7] 出典はNFLの選手やチームのデータを掲載しているウェブサイトであるPro Football Reference 。https://www.pro-football-reference.com/teams/nor/2024.htm
[8] 出典はPro Football Reference。 https://www.pro-football-reference.com/teams/dal/2023.htm
Masayuki Kitano への返信 コメントをキャンセル