ハーフタイム時点で35失点。この前のディフェンスの頑張りはどこへいったのだろうか。ニューオーリンズ・セインツが繰り出すモーションや、フラッグフットボールばりのミスディレクションに幻惑されたディフェンス陣は完全に足をとめられ、セインツはやりたい放題で、前半はパントどころかフィールドゴールさえせずに、攻撃権を得るごとにタッチダウンで得点を重ねていった。
毎試合30失点を覚悟せざるを得なかった、2020年シーズンの、笊(ざる)ディフェンス[1]にまるで逆戻りしたかのようだった。
この試合を見ていて思い出したのは、1988年1月に行われたスーパーボウルXXII、ワシントン・レッドスキンズ(現コマンダーズ)対デンバー・ブロンコズの試合。序盤、QBジョン・エルウェイが率いるブロンコズが10対0でリードしたものの、セカンド・クォーターに入るとワシントンが35連続得点し、一気に逆転。結局ワシントンが42対10[2]で勝った試合だ。
セカンド・クォーターあたりからワシントン得意のランプレー、「カウンタートレイ」[3]が面白いように決まり、ブロンコズのディフェンスは為す術なし。ワシントンのRBティミー・スミスはランで204ヤード獲得し、タッチダウン2つを決め大活躍した。
セインツ相手にハーフタイムで35失点したカウボーイズ・ディフェンスは完全に翻弄された状態で、(何しろセインツは前半5回攻撃権を得て5回ともタッチダウンに成功。)36年前のスーパーボウルのブロンコズ・ディフェンスを彷彿とさせた。
QBダック・プレスコットとオフェンスのプレイコールを担当しているヘッドコーチのマイク・マッカーシーは粘り強く、辛抱しながら頑張っていたように見受けられた。
だが、セカンド・クォーター終盤に13対28でカウボーイズの攻撃中に、ワイドレシーバーがパス・プレイの途中で転んでしまい、セインツにインターセプトされる。その後セインツがタッチダウンで得点し、カウボーイズはフィールドゴールを決めたものの、ハーフタイム時点で16対35の劣勢。
うまく修正して後半に挽回する事を期待したが、むなしい願いに終わった。
今週、ダラスにとってややラッキーだったのは、NFCで同じ東地区のフィラデルフィア・イーグルズがアトランタ・ファルコンズ相手にまさかの敗北を喫したこと。イーグルズもカウボーイズと並んで1勝1敗の成績に留まっている。
さて、第3週目の対戦相手は強敵のボルチモア・レイブンズだが、レイブンズは0勝2敗でダラスの本拠地に乗り込んでくる。0勝2敗という成績をみると、一見調子が悪そうだが、もともと地力のあるチーム。シーズン1勝目を挙げる為に必死に立ち向かってくるだろう。
ランが得意なQBラマー・ジャクソン、そして巨大なパワーRB のデリック・ヘンリーをカウボーイズ・ディフェンスは止められるのだろうか。コーディネーターのマイク・ジマー指導の元、ディフェンス陣が初戦に見せたような強さを発揮してくれる事を期待したいが、劣勢は否めないか。
カウボーイズは現地時間の9月22日(日曜日)にレイブンズと試合した後、9月26日(木曜日)にニューヨークでジャイアンツと対戦する予定となっており、目先はハードスケジュール。ジャイアンツ相手には完勝を期待したいところだが、下手をするとそこで3連敗し、1勝3敗でピッツバーグに乗り込む羽目になりかねない。しかもその次の対戦相手はデトロイト・ライオンズ、その次はサンフランシスコ・49ers。まさかの1勝6敗スタートがちらつき始めている。
そういう展開を避ける為にも、レイブンズ相手にディフェンスがせめて復調の兆しを見せて、いい試合をする事は非常に重要な気がする。シーズンを通して考えると、個人的にはまだまだ楽観的に構えているが、今年はラン・ディフェンスが昨年より強化される事を想定している。その想定を下支えしてくれるような、勇気づけられるような試合展開を期待したい。
[1] マイク・マッカーシーがダラスのヘッドコーチに就任した一年目で、ディフェンス・コーディネーター(DC)はマイク・ノーラン。QBのダック・プレスコットが負傷の為、シーズン途中で離脱したことが大きく響き、6勝10敗。ディフェンスは16試合で473失点。一試合あたりほぼ30失点で、32チーム中28位の体たらく。40対39で勝ったかと思えば、38対49で負けたりもする、ある意味ワイルドなシーズンだった。シーズン終了後ノーランは解任され、ダン・クインがDCに就任した。
[2]この 試合は生中継をTV観戦したので覚えているが、試合の経過や選手の成績についてはPro Football Reference を参照した。https://www.pro-football-reference.com/boxscores/198801310den.htm
[3] Counter TreyについてはGrantlandとワシントン・ポストの昔の記事が詳しく解説している。
“Draw It Up: The Kansas City Chiefs and the Counter Trey,” By Chris Brown, Grantland, Nov. 1, 2011, Accessed on Sept. 20, 2024.
“Counter-Trey’: Redskins’ Power Play Meets Goals Through a Deceiving Line,” By Gary Pomerantz, Washington Post, October 5, 1984, Accessed on Sept. 20, 2024.
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