【書評】When: The Scientific Secrets of Perfect Timing, Daniel H. Pink, Riverhead Books, New York, 2018, 260 pages.

『When:完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク作 勝間和代訳 講談社 東京 2018年 317頁。

img_5598

 五年ほど前、「いつにしようか」と真剣に悩んでいた事があった。仕事が行き詰った四十八歳の頃。どんよりした気持ちで「そろそろ転職しようか」と考え込む毎日だった。すると、近所づきあいのある、マヤ暦を使いこなす人が気にかけて下さり、占って貰えることになった。占い結果に至るまでの計算が書き込まれた、十頁に及ぶ資料を渡され、驚くと同時に感動した。「新しい事を始めるのに適した時期がもうすぐ来ますよ」という言葉をかけてもらい、嬉しかった事を思い出す。

 そういうビッグな「いつ」はそうそうないが、常にあるのは、毎日を有効活用したいという思い。ブログは何時頃書くのがいいのか。ジョギングやジムには何時に行けばいいのか。読書したり、勉強したりするのに最も適した時間帯はいつなのか。職場のオンラインミーティングは何時頃に設定するのが良いのか。朝、何時に出勤するのがベスト[1]なのか

 こういった悩みへの答えを求め、手に取ったのが本書「When」である。著者のダニエル・ピンクは自己啓発書のベストセラー作家で『モチベーション3.0:持続する「やる気!」をいかに引き出すか』を代表作の一つに数える。作家以外の経歴もユニークで、1990年代には当時のアルバート・ゴア副大統領のスピーチライターを務めた事もある一方、東京で日本の漫画業界を研究した事もあるそうだ。博識多才な人物だ。

 本書を読みたいと思った最初のきっかけは、ユーチューブで著者の講演を視聴した事だった。著者はそこで大事な診察のために病院で予約をとる時は、人間の集中力が低下する午後の予約は避け、午前中にした方がいい、と述べていた。

 時間帯によって、そんなに人間の調子は変化するのだろうか。著者曰く、イギリスのある調査によると、平均的な労働者の生産性が一日の間で最も低くなるのは午後二時五十五分なのだそうだ。また、DeskTimeという、生産性を測るソフトを作成する会社の調査によると、生産性が高い人は五十二分働いた後に十七分休憩をとる傾向があるらしい。午後三時頃に十五分休憩を挟むのがいいかも。

 昼寝もいいらしい。ただし三十分以上は禁物。コーヒーを一杯飲んでから十分~二十分寝るのが良いらしい。[2]カフェインが血液中に流れ出すまでに二十五分かかる為、目覚めた時に効果が表れ、眠気は吹き飛び、パフォーマンスが上がるそうだ[3]。 

img_5599

 著者は中間地点の重要性についても言及している。人間の自己幸福感は五十代前半に一番低下する事を示す複数の研究があるそうだ。(アメリカ人男性の場合、自己幸福感の最低地点は52.9歳との事。年齢的にはまさに2025年の自分だが、日本人も似たようものなのだろうか。)

 ではミッドライフ・クライシスはどう乗り越えるべきか。著者は投資家のウォーレン・バフェットが考案したとされる方法を勧めている。まず達成したい目標を二十五個書き出す。その中から最重要目標を五つ選び、達成する為の計画を考える。残りはその五つが済むまで放置する。色んな事を中途半端にやるより、大事な事を実現していく方がスランプから脱出しやすいらしい。

 著者は「終わり良ければ総てよし」の実践も推奨している。一日の終わりにその日やり遂げた事を数個書き出す。そこで進歩を実感してモチベーションを高め、翌日の予定を数個書き出す。これでバッチリだそうだ。

 以前は「タイミングこそがすべて」と考えていた著者。いまや「すべてはタイミング」と考える境地に到達したそうだ。

 マヤ暦の占いの後、四十九歳で転職し、五十一歳で書き始めたこのブログ。記事の掲載数を増やすためにも、生産性が高そうな早朝の時間帯に書く事を習慣づけていきたい。


[1] 十年位前に、家族ぐるみで付き合いのあった、駐在員の人は毎朝3時に起き、四時台に出勤していた。まだ誰も職場に来ていない間に集中して仕事に取り組み、夕方の四時位に帰宅し子供と遊ぶ事もできたようだ。今思えばむちゃくちゃハイパフォーマンスな働き方。

[2] 本書、69頁。この点について本書が参照している研究は広島大学の研究者によって実施されたもののようだ。論文は2003年にオンラインで公表されている。https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1388245703002554?via%3Dihub

Tags:

コメントを残す