【NFL観戦記】ダラス・カウボーイズ2025年ドラフト

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昨シーズン途中から怪我で欠場した、クオーターバックのダック・プレスコット選手の復調に今シーズンは期待がかかる。

 ダラス・カウボーイズは、一年目からすぐ活躍できそうな選手を今年のドラフトで数人指名し、良い補強ができた。

 一方で、大きなチャンスを逃したのでは、という疑念も残り、どこかすっきりしないドラフト結果となった。

 NFL選手のパフォーマンス・データを集計する、データ分析会社、プロ・フットボール・フォーカス(PFF)[1]の評価では、アリゾナ・カーディナルス、カロライナ・パンサーズと共に、カウボーイズのドラフト結果は、なんと最上級の「A+」ランクとされている。ドラフトに関して、カウボーイズがPFFからこんなに高い評価を得たのは初めてのことだ[2]

 新ヘッドコーチ、ブライアン・ショッテンハイマ―にとって、就任後の初ドラフトとなった。選手選びの手腕や、ドラフト意思決定プロセスへの影響力など、チームを指揮する者としての力量が試される場となった。

 一巡目でカウボーイズが選択したアラバマ大学のオフェンスラインの選手、タイラー・ブッカーは、チーム首脳陣から早くも右ガードの先発要員に指名されている。

 右ガードは、最近引退を表明し、殿堂入り間違いなしとされる、ザック・マーティン選手が昨シーズンまで守っていたポジション。センターや左ガードともに、ラン攻撃の道を開いたり、相手ディフェンスの中央突破を阻止し自軍クォーターバック(QB)を守ったりするのが主な役目だ。

 その重要なポジションで、ブッカーはマーティン並みの活躍を期待されている。それぐらい、学生のころのブッカーは相手チームのディフェンスラインをパワーで圧倒していた。

 それにしても、である。カウボーイズに指名順が回ってきた時点で、本当にブッカーが、指名待ち選手の中で最も高く評価されていた選手だったのだろうか。

 ショッテンハイマ―新ヘッドコーチは、マーティンの引退で生じた穴を埋めることを優先してしまったのではないか。

 ここで思い出されるのは2011年ドラフト。一巡目九番の指名権を持っていたカウボーイズは、そこでオフェンスラインの選手、タイロン・スミスを指名した。昨シーズンを最後に引退したスミスは、マーティン同様、殿堂入り間違いなしと見られている。

ただ、2011年ドラフト当時、ダラスが一巡目の指名権を行使する段階ではまだディフェンシブエンドのJ.J.ワット選手も指名されず残っていた。(2026年1月13日追記: 「T.J.ワット」と誤って記載していた為、「J.J.ワット」に修正しました。カウボーイズがT.J.ワット選手を指名せず他の選手を指名したのは、2011年のドラフトの時ではなく、2017年の出来事でした。J.J.ワットのポジションをディフェンシブエンドに修正しました。)

 ワットは2021年にNFLの年間最優秀ディフェンス選手に選ばれ、2010年代から2020年代前半まで、常にNFL最高のディフェンス選手の一人でありつづけた。彼もやはり殿堂入りが確実視されている。

 カウボーイズがスミスを指名したことについては、当時も今もメディアで批判する声は皆無である。それぐらい前評判の高い選手だったし、実際一年目から大活躍し、長年カウボーイズのオフェンスラインを牽引することとなった。

 もしワットがカウボーイズ入りしていたらチームの運命はどう変わっただろうか。ワットをドラフトで指名し、オフェンスラインは他の方法で補強した方が、チームを効率よく強化できたのではないか。

 カウボーイズは当時、なぜワットを指名しなかったのか[3]。チーム首脳陣はワットがチームのディフェンス・スキーム、フォーメーションに合わないと判断していた、という趣旨の報道内容を、以前見た記憶があるのだが、噴飯ものの言い訳だ。真に力のある選手はスキームに関係なく活躍するだろう。今のカウボーイズ・ディフェンスの要、マイカ・パーソンズを「スキームに合わない」から不要、などと考えるNFLチームは一つもないだろう。

 今年のドラフト一巡目指名をカウボーイズがおこなった時の状況は、2011年ドラフトの事を想起させた。

 各種報道によると、一巡目十二番の指名権を持っていたカウボーイズは、アリゾナ大学のワイドレシーバー(WR)テタイロア・マクミラン選手の獲得を目指していたそうだ。ただ、マクミラン選手は、一巡目八番でカロライナ・パンサーズに指名された。

 それでも、カウボーイズが一巡目指名を行う時点では、まだペンシルバニア州立大学のタイトエンド(TE)タイラー・ウォーレン選手や、ジョージア大学のエッジディフェンダー、ジェイレン・ウォーカー選手など、記者やアナリストに高く評価されていた選手も残っていた。カウボーイズにはこの二人のうちのどちらかを指名すべきだったのではないか。

 タイトエンドにしろ、エッジディフェンダーにしろ、カウボーイズにとって補強の優先度が高いポジションではなかった[4]。ただ、近年カウボーイズがドラフト一巡目でホームランを打った時はまさに、補強する必要のないポジションの選手をあえて選択した時[5]であった。チャンスを逃した、という印象を払拭できない。

 近年のカウボーイズは、特にジェイソン・ギャレット体制以降、オフェンスラインにドラフト資源を投下しすぎているのでは、という疑問点がある。

 チーム作りの哲学として、オフェンスラインはドラフトの二,三巡目以降の選手やフリーエージェントで獲得して育成するようにする。そしてドラフト一巡目はコーナーバックや、エッジを含めたディフェンスライン、ワイドレシーバーなどを指名することを優先した上で、補強ニーズとは関係なく、純粋に最も高く評価している選手を指名する、という考えに徹するべきではないか。

 ウォーカーやウォーレンが、それぞれ十年に一度の逸材と言われるような大活躍を遂げた場合、二人のうちのどちらかを今ドラフトで指名しなかったことを後悔することになるだろう。

 もっとも高い評価を得ている選手を指名する、という姿勢にカウボーイズが徹したのはむしろ二巡目以降だ。

 二巡目で獲得したエッジディフェンダーの選手や三巡目で獲得したパスディフェンスの要であるコーナーバックの選手は二人とも、一巡目で選ばれてもおかしくない実力と潜在能力を持っているというのがもっぱらの評価だ。

 五巡目で指名したテキサス大学のラニングバックの選手は脚が速く、パスキャッチもうまく、ビッグプレイが期待できそうな選手だ。七巡目で指名したディフェンスラインの中央を守る選手は、ここ数年カウボーイズの弱点だったランディフェンスの強化につながる活躍を見せてくれるのではないか、と期待されている。

 ここ数年と比較すると、自由契約選手の獲得も含め、カウボーイズのオフシーズンの補強はうまくいっているようで、九月のシーズン開幕が今から楽しみだ。


[1] Pro Football Focus

[2] PFFがウェブサイトをローンチしたのはウィキペディアによると2007年、とのこと。ドラフト結果評価をいつから始めたのかは未確認。

[3] ワット選手の前評判は当時そこまで高くなかった、とする見方もあるようだが、それも後付けの言い訳に聞こえてしまう。

(2011年ドラフト前の評価として、パスラッシュ能力は未知数、と懸念する見方もあったようだ。出典: An oral history of the star-studded 2011 NFL draft, five years later, by Ben Baskin, SI.com, Apr 26, 2016, retrieved on Jan 13, 2026.)

[4] エッジにはすでにエース選手のマイカ・パーソンズがいるし、シーズンオフには以前カウボーイズで活躍したダンテ・ファウラー選手を獲得している。タイトエンドは近年、四巡目でジェイク・ファーガソン選手、二巡目でルーク・スクーンメイカー選手を選択している。

[5] 今のカウボーイズの大黒柱の二人、エッジディフェンダーのマイカ・パーソンズ選手とワイドレシーバーのシーディー・ラム選手は、まさにそのような状況下でカウボーイズが選択することができたエース。三人目の大黒柱はQBのダック・プレスコット選手だろう。

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