【NFL観戦記】2026年第8週 ダラス・カウボーイズ対アリゾナ・カージナルス

 悪い予感はしていた。近年、ダラス・カウボーイズはなぜかアリゾナ・カージナルスとの対戦を苦手にしている。21世紀に入ってからの対戦成績は5勝10敗で、今世紀中、カウボーイズが一番輝いていた2014年のシーズンに対戦した時でさえ、勝てなかった。
 先週イーグルズに勝ち、勢いをつけて挑んだはずのカージナルスとの試合。ホームで対戦した結果は、30対33でまさかの敗北。第4クォーターの途中、24対10でリードする局面があったにもかかわらず、その2タッチダウン差を守りきれず負けてしまうという、カウボーイズファンの忠誠心が限界まで試される、タフな試合展開となってしまった。
 特に印象に残ったのは、タイムマネージメントのまずさ、そしてそれと表裏一体の関係にある、ディフェンスのもろさ、である。一方、今後について期待と希望をもたらしてくれるファインプレーも随所にあった。
 まずは、第3週のブラジルでのボルチモア・レイブンズ戦での「マラカナの7秒」に続き、またもや頭をもたげてきた、ダラス・カウボーイズのクロックマネージメントへの疑問を呈したい。状況としては、第4クォーター終盤、スコアは27対24でカウボーイズのリードという場面。カウボーイズが攻め込み、カージナルスのゴールラインまで残り23ヤードというところまで迫ったものの、そこで攻撃はとん挫し、フォースダウンで残り13ヤード。試合時間は残り1分14秒である。重要なのはこの時点でカージナルスはタイムアウトを使い果たしていた、ということ。さて、どうするか。
ここでカウボーイズのヘッドコーチ、ブライアン・ショッテンハイマ―は当たり前のようにフィールドゴールを蹴る事を選択した。(この試合を解説していた、元カロライナ・パンサーズの名タイトエンド、グレッグ・オールセンもこの決断には特段異論を挟まなかった。)フィールドゴールが決まればカウボーイズのリードは30対24に広がる場面で、実際そうなったのだが、問題は試合時間を1分以上残してカージナルスに攻撃を渡してしまう点である。今のカウボーイズディフェンスにとって、1分はほぼ永遠に等しい。相手に時間を与え過ぎである。(ただ、ここでフィールドゴールを狙うのはセオリー通りかもしれない。少なくとも平均的なディフェンスを擁するチームにとっては。カウボーイズの首脳陣は、自軍ディフェンスのもろさに目をつむって作戦をたてているように思えて、見ていてフラストレーションがたまる。)
 ここは頼りになるラニングバックのジャボンテ・ウィリアムズ選手に走ってもらうランプレイを選択し、試合時間を45秒へらす事を選んだほうが良かったのではないだろうか。仮にノーゲインに終わったとしても、カージナルスはタイムアウトなし、自陣23ヤード地点から残り時間29秒という状況で攻撃を開始する事になるはず。オフェンスラインとウィリアムズ選手の火事場のクソ力で、そのままタッチダウンという夢のような展開も、ワンチャンスあったかもしれない。(ただ、あまりラン攻撃が上手く行っていない試合ではあった。)
 また、カージナルスにとって、自陣23ヤードから残り29秒で、フィールドゴールを狙える35ヤード近辺までボールを進めるのと、キックオフリターンを経て自陣30~35ヤード地点から残り1分でタッチダウンを決める事を比較した場合、より可能性が高いのはどちらか、という話である。こうやって並べて改めて比較してみると、あまり大差なかったのかもしれない。ただ、カージナルスにタイムアウトが残っていなかった事、及びビッグプレイを防ぐのが苦手な今のカウボーイズディフェンスの状態からすると、カージナルスにとって見れば残り時間が多い方が攻めやすかったのではないだろうか。。。
 さて、この試合の二つ目のポイントはカウボーイズディフェンスの二面性である。良い面に目を向けてみると、ディフェンシブタックルのクイネン・ウィリアムズ選手が2サック、そしてエッジ・ディフェンダーのヴォン・ミラー選手とドナバン・エゼイラク選手が1サックずつ決めるなど計5サックを記録したのは素晴らしい。また、ターンオーバーを2つ奪うなど、他にもファインプレーはあった。
 その一方で、カージナルスの伏兵的存在のランニングバック、タイラー・アルガイアー選手に11回のランで147ヤード獲得とパスキャッチも含め合計で2つのタッチダウンを許し、エースレシーバーのマイケル・ウィルソンにはパスキャッチ8回で111ヤードとタッチダウン1つ許す等、カージナルスにビッグプレイを決められる場面も目立った。
 ファインプレイとビッグミスが混在する、なんともボラティリティの高いディフェンスぶりである。
 相手がロングパスを狙っているのが分かっている場面でロングパスを通されてしまう、という事がシーズンを通して続いているし、外へのランで抜き去られて、泣きを見る事も相変わらず多い気がする。なんとか修正できないものだろうか。
 さて、暗い話ばかりでは今後の観戦の楽しみも減るので、あえて他にポジティブな材料を探すと、オフェンスではレシーバーのジョージ・ピケンズ選手がフィールド左の方でパスを取り、そこからスルスルっと斜め右前方向に走り込んで30ヤードほど獲得する場面もあった。
 とは言え、これでカウボーイズは3勝5敗。米国の感謝祭休日までの向こう3試合は、インディアナポリス・コルツ、サンフランシスコ・49ers、テネシー・タイタンズとの対戦となる。無理を承知で言えば、ここは3連勝を目指して欲しい。(49ers戦は特に厳しいものの。)そうすれば、シーズン通算で6勝5敗と勝ち越せる。ここで思い出すのは、1990年代にニューヨーク・ジャイアンツをスーパーボウル優勝に導き、その後ニューイングラン・ペイトリオッツやカウボーイズのヘッドコーチも務めたビル・パーセルズが、よく口癖のように、語っていた話である。その趣旨は、感謝祭後の成績はチームの実情を嘘偽りなく反映する、というものだ。それはつまり、チームの実力を見極めるにはそれまではかかる、という事だろう。
 それならば、少なくともサンクスギビングまでは、この呆れるほどボラティリティの高いチームに幾度失望させられようとも、諦める事なく、ハラハラしながら、とことん付き合って応援しようではないか、というのが今週の試合を観戦してたどりついた結論である。
 外野からの、首脳陣を含むチームへの批判はいよいよ苛烈さを極めつつあり、カウボーイズファンの士気はドン底にまで落ち込んでいる。厳しい11月となりつつあるが、過ぎた事はもうしょうがない。オフェンスは毎試合40得点を目指し、ラインオブスクリメージに並行するようなパスはプレイブックから削除し、前半はフィールドゴールを狙う事は禁止するなど、思い切った方策をとってみてはどうだろうか。ここでビビっている場合ではない。ここから勝率5割以上にまで戻せれば、確実に今後の飛躍へと繋がる気がする。ヘッドコーチのブライアン・ショッテンハイマー、ディフェンシブコーディネーターのクリスチャン・パーカー、クォーターバックのダック・プレスコット選手、エースレシーバーのシーディー・ラム選手とジョージ・ピケンズ選手、ランニング・バックのジャボンテウィリアムズ選手、オフェンシブラインのタイラー・スミス選手とタイラー・ブッカー選手、ディフェンシブ・タックルのクイネン・ウィリアムズ選手、ラインバッカーのデマービオン・オーバーショウン選手、コーナーバックのジョーイ・ポーター・ジュニア選手、セイフティのケイレブ・ダウンズ選手を始めとし、何とかチーム一丸となって奮起してくれる事に期待したい。

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